2025年04月12日
イタリア・トリノでロンブローゾ博物館を見る
Img_8392トリノ大学でのワークショップに参加したついでに、同大学に在籍されていたチェーザレ・ロンブローゾの博物館を見学した。
法学を学んだ者なら誰でも耳にしたことのある、インパクトのある名前で、犯罪者には身体的特徴などから生来的要因があるという生来的犯罪者説を唱えたことで有名である。
ロンブローゾの学説を一言で言うなら、犯罪者には共通の人類学的特徴を備えている者が相当割合含まれていて、その特徴を備えるグループホモ・デリンクエンス(犯罪人)とグルーピングしたと言うわけである。人類学的特徴ということだから、その研究は身体的特徴、特に頭部の特徴を測定することに重きを置き、したがって死刑または獄中死を遂げた人々の大量の頭蓋骨とその測定器具などが展示されている。
頭蓋骨についてはおそらく尊厳の関係で撮影禁止であった。レプリカの展示は撮影可。
また、トリノ大学の教授であったロンブローゾの元にはフィラデルフィアの刑務所の建築構想が持ち込まれてもいた。
例の、放射状に監房棟を配置して監視と隔離の便宜を図るというあれである。
ロンブローゾの研究に対する評価はともかくとして、そのインパクトは大きく、例えばシャーロック・ホームズ・シリーズには犯罪者的特徴や天才の特徴が身体的に表れているし、脳の大きさなどを死後に計測された有名人は夏目漱石だけではない。そして、女性の犯罪は月経によって引き起こされるとか、女性は簡単に嘘をつくとか、現代日本のX民とか国会議員の一部とかでもいいそうな話にもつながっている。
あるいは、AIによる監視カメラデータの特に人の画像認識と犯罪発生予測などというシステムに、犯罪者の人類学的特徴みたいな「データ」が間違って入り込んでいるかもしれない。
要するに、数多くの偏見と差別の元となりやすい「まことしやかな理論」というところである。
2025年04月12日 学問・資格, 旅行・地域, 外国法事情, 刑事法 | 固定リンク
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