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血が逆流するような怒りの感情、血管障害を招く

登録:2024年05月17日 02:15 修正:2024年05月17日 08:34
[クァク・ノピルの未来の窓]
血管の弛緩を妨げ、血流を妨害
8分間の実験で40分間障害が続く
怒りの感情が血管の弛緩を妨げ血流を妨害することが明らかになった=ピクサベイ//ハンギョレ新聞社

血液は血管の収縮と弛緩を通じて全身をめぐり、酸素と栄養分を供給する。

ところで、怒りが込み上げるときに「血が逆流する」という表現をよく使う。本当に血が逆流すれば致命的な事態となるだろうが、腹が立つときに血流で起きる変化の感じを端的に表現した事例だといえる。

腹が立つとき、はたして血管ではどのようなことが起きるのだろうか。科学者が実験した結果、実際に怒りの感情は血管の弛緩を妨げ、血流を妨害することが明らかになった。

米国コロンビア大学アービング医療センターの研究チームは、怒りと悲しみ、不安という3つの否定的な感情が血管の機能にも否定的な影響を及ぼすのかを実験し、その結果を米国心臓協会ジャーナルに発表した。

研究チームはまず、ニューヨーク市に住む18〜73歳(平均26歳)の健康な成人280人を募集した。続いて、これらの人たちを実験開始前に座らせて30分間の休息を取らせ、血圧と心拍数、血流量を測定し、血液を採取した。

次に、4つのグループ(怒り、不安、悲しみ、無感情)に分け、8分間でそれぞれに該当する感情に誘導した。怒りと不安のグループにはそれぞれ、自分が腹を立ったり不安にさせる記憶を思い浮かべさせた。悲しみのグループには、憂鬱な感情を誘発する文章を読ませた。対照群である無感情のグループには、落ち着いた状態を誘導するために、0から100までの数字を数えさせた。研究チームは実験が終了してから3分、40分、70分、100分後にこれらの人たちの血圧と心拍数、血管の変化を測定した。

その結果、怒りのグループの血管で明確な変化を発見した。実験直後から40分後まで血管が弛緩できない現象が続いた。血管の弛緩能力が損なわれれば、アテローム性動脈硬化症の発病リスクが高まり、これは最終的には心臓まひや脳卒中のリスクにつながる。また、採取した血液を分析した結果、怒りの感情は細胞障害の指標と細胞の再生能力にも影響を及ぼしたことが分かった。

しかし、不安と悲しみの感情のグループには、有意な変化は現れなかった。

ところかまわず怒ると血管は慢性的な損傷を被り、これが血管の健康を害して最終的には心臓疾患のリスクを高める=ピクサベイ//ハンギョレ新聞社

しかく統制力を失った怒りは悪循環を招く

研究チームは「今回の研究を通じて、怒りの感情が生じると血管機能の障害が発生する事実を確認した」とし、「しかし、このような変化を起こす原因はまだ分かっていない」と明らかにした。ただし、研究を主導したシンボ教授は、自律神経系である交感神経の活性化やストレスホルモンの分泌の変化などが影響を及ぼし、血管の内壁もなんらかの経路で関係している可能性が高いと述べた。

心臓協会の編集委員会を担当しているヒューストンのベイラー医科大学のグレン・レビン教授は「今回の研究は、精神の健康が心血管の健康に影響を及ぼす可能性があり、怒りやストレスのような極端な感情が心血管の疾患につながる可能性があることを示すもう一つの証拠」だと述べた。

もちろん、怒らずに生きることは難しい。たまに短時間怒ることは、きわめて正常な生活の一部だ。問題は頻繁に繰り返して怒ることだ。シンボ教授は「ところかまわず怒る人は、血管が慢性的な損傷を受けている」としたうえで、「この状態が続くと、血管の健康を元に戻せないほど傷つけてしまい、最後には心臓疾患の危険に陥ることになる」と述べた。

シュミット心臓研究所のジョー・エビンジャー教授はCNNに「あるメカニズムの存在を理解することは、治療の第一段階」だとしたうえで、「怒りを否定しろということではなく、怒りを調節して最小化できる方法を探ることが重要だ」と述べた。

*論文情報
doi.org/10.1161/JAHA.123.032698
Translational Research of the Acute Effects of Negative Emotions on Vascular Endothelial Health:Findings From a Randomized Controlled Study.

クァク・ノピル先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/science/science_general/1140741.html 韓国語原文入力:2024年05月16日 21:52
訳M.S

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