しばらくの間、人が住んでいなかった建物をリノベーションさせていただきました。
耐震強度や断熱性能を向上させ、水まわりも一新し、部屋の用途を変えることとなったため、
今回のリノベーションでは、その多くは役目を終わらせることになってしまいました。
ただ、そこには今はもう手に入れることはできない貴重なモノもあり、
少しでも以前の暮らしの面影を残せたらという思いもありました。
ひと手間くわえ、なんとか蘇らせることができたモノもいくつかありましたので
その一部を紹介させていただきます。
【玄関ポーチのあかり】
ほこりをかぶり錆びついていたまんまるいガラス製の照明。
丁寧にほこりと錆落としをして、保護の為、塗装を施しました。
ホタルのようなほっこりしたあかりが玄関を照らしてくれます。
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【玄関ホールのあかり】
碁盤の目のような照明は、汚れを拭き取り、電球を交換するだけでそのまま使えました。
普段は明るく玄関ホールを照らしてくれます。
ときには、この下には花を生け、壁には絵画を飾ることもあるでしょう。
その時は、優しいスポット照明として脇役になりそうです。
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【台湾桧の建具】
幾人のひとが、この丸い真鍮のドアノブに手をかけたのでしょうか?
飴玉のような艶になっています。
向こうを覗きたくなる鍵穴があります... さすがに鍵はみつかりませんでした。
さてドアのかまち(茶色の濃い部分)ですが、
「とても珍しい木材ですね」と建具職人さんが言われていました。
どうやら、明治神宮の大鳥居や、靖国神社神門の門扉にも使われている『台湾桧』だそうです。
緻密な年輪が特徴な優良な木材のため、以前は輸入していた木材ですが、輸出禁止・伐採禁止となった貴重の木材のようです。
これは、この先も残したいですね。
鏡板(茶色の薄い部分)は、損傷がありましたので、新しくしました。
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【格式ある格天井】
この家の一部屋だけは、太い角材を正方形に組みその上に板をはめ込んで作られた『格天井』です。
二条城の二の丸御殿や日光東照宮外陣などの格式の高い建物に、古くから用いられていることが多いようですが、
この部屋は、ずっと前は診療室だったようです。
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【急勾配の小屋裏階段】
小屋裏へのぼる急勾配で横幅が狭い階段。
築年数を重ねている昔の家には、大体このような階段がありました。
なるべくスペースを節約して居住空間を広くするためや、
限られた材料を節約するためにこのように造ったんだと聞いたことがあります。
今回キズはそのまま残したまま、安全に上り降りができるように、手すりのみを取り付けました。
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【欄間】
和室のエアコンを目立たなくする為に、和室の続き間にあった縦繁格子の「欄間」を再利用しました。
縦方向の細い桟が細かく連続して組み込まれているの繊細な欄間は、
経年劣化している箇所もあり、取り外す時は3人がかりで、
力をかけずそっと慎重に行いました。
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新しい息吹きを吹き込まれたモノたち、
この先もずっとこの家を見守っていってほしいですね。