2025 年 77 巻 1 号 p. 21-31
鏡映対称性の破れた系では,運動ヘリシティ は平均絶対渦度(平均渦度と系の回転角速度,すなわち平均速度勾配の反対称成分)への結合係数としてReynolds応力表現に入る[ :速度ゆらぎ, :渦度ゆらぎ, :統計平均].これは,乱流エネルギーが,平均速度歪み(平均速度勾配の対称成分)への結合係数としてReynolds応力の渦粘性表現を通して本質的な役割を果たすことと好対照をなす.平均渦度方程式中の乱流渦起動力 を考えることで,非一様な乱流運動ヘリシティによって,平均絶対渦度の方向に巨視的な流れが誘起されることが示される.この非一様ヘリシティ効果が,恒星対流層の巨視的流れとその維持に応用される.球殻対流層の直接数値計算を用いて,恒星対流中の角運動量輸送への非一様ヘリシティ効果の寄与が議論される.経度方向流れの差動回転や子午面環流などの大規模流れ構造と乱流の統計的性質との関係が強調される.