1田島 也考
(たしま なりたか) [株式会社エージーピー 営業開発本部 フードシステム事業部 課長補佐]
エレクトロヒート第217号
(平成31年1月15日発行 特集
「ニュークックチルシステム」
引用)
北里大学病院
昭和46年7月に
「患者中心の医療」
を掲げて開院した北里大学病院は許可病床数1,000床を超える総合的病院である。
平成26年5月の新病院の開院に合わせ、
ニュークックチルシステムが導入された。
今回は地域のフラッグシップを担う総合病院の厨房事例を紹介する。
はじめに12)
再加熱カート
料理の再加熱には当社のIH加熱カー
ト24食タイプ
(型式:IHH2‐2F824Q)
を50台導入。
このIH再加熱カートは電磁誘導加熱
技術を応用したカートで1個の食器から
加熱することができ、
加熱した食器の
数だけ電気を消費する。
また、1トレイ
あたり3点
(主菜・副菜・汁)
まで加熱で
き、
各メニューに応じて、
加熱時間と5
段階の火力をそれぞれ調整することが
可能であるため、
省エネで仕上げ加熱
することを実現。1)ニュークックチルシステムの導入経緯
入院患者の食事満足度向上は、
調理従事者の労務軽減と快適な作業環境の整備が不可欠である。
「安心・安全」
はもちろんの
事、
365日昼夜動き続ける厨房は、
高効率さらには働きやすさ、
使いやすさが重要視される。
なお、
単独の院内セントラルキッチン
として、
ニュークックチルチルシステムの導入により、
給食業務の改善が期待できる。
次に計画調理と事前盛り付け作業、
加熱カー
トによる直前加熱により、
適温の食事、
衛生管理の向上が図られる。
最後に災害時に強いニュークックチルシステムにより、
地域中
核病院として災害時は、
入院患者に調理済みの食事提供が実現できる。
これらの目的をベースとして厨房計画が行われた。
導入した背景や設計コンセプト等2型式
品名
食数
寸法
重量
電源
消費電力
棚ピッチ
IHH2‐2F824Q
IH加熱カート(24食)×ばつH1,473(mm)165kg
三相 AC200V 50/60Hz4.68kw145(mm)IH加熱カート
(24食)
新病院全景 施設全景
ニュークックチル
(再加熱カート)
導入事例2北里大学病院3)集中管理コントロールシステム
大型病院であるため、
再加熱カート1台
あたりの操作と監視に時間と手間を要
するため、
一括してカートそれぞれの設定(加熱終了時間、
加熱時間、
火力等)・制御と監視を行うシステムを導入。
無線
通信を採用し、
日々の作業効率向上とリ
スク管理に貢献している。
カート本体無線アンテナ 集中管理コントローラー画面4)導入までの試作およびトレーニング
新病院開院15ヶ月前に院内テストキッチンを開設し、
ブラストチラーをはじめ、
クックチル調理に必要不可欠な機器を導入。
管理栄養士、
調理師によるプロジェクトメンバーを選定し、
メニュー試作を開始した。
また、
開院前には新厨房にて試作で完成
したメニューの調理からベルトコンベアでトレイメイク、
カート再加熱、
配膳までのトレーニングにおいてスタッフ一同準備を
重ね、
スムーズに新病院の運用へ移行できた。5)運用例
チルド室にカートごと再加熱終了までチルド保管。
温菜の再加熱はこの部屋の中で行われる。
カートそれぞれに冷凍機を搭
載していないため、
清掃後の予冷が不要であり、
一括して料理の温度管理ができるメリットがある。
再加熱終了後、
予め、
食器
に盛り付けられ、
温蔵ワゴン等に保温しておいた主食類を後付けする。
その後、
加熱状態とセット内容をチェックし、
各病棟へ
配膳する。
集中管理コントローラーで予めそれぞれのカートの再加熱終了時間を病棟別に設定を行っている。
トレイメイク工程
(スタートライン) トレイメイク工程
(料理の盛り付け・セット)
トレイメイク工程
(カートセッティング) チルド室
(再加熱カート用)3北里大学病院
医療を取り巻く環境は、
深刻な人手不足や原材料費の高騰など悪条件が重なっている中で、
栄養部では毎回700食程度の食事
を提供している。
平成27年4月からはCK・SKシステムにて近隣の北里大学東病院にクックチル調理品の配送を開始した。
(1食
あたり130人分。
1日1回の配送)
また、
新病院オープンから3年目から作業が安定してきたとのこと。
従事者の満足度も向上するな
ど成果が見られてきた。
通常メニューに加え、
イベントにあわせたメニューや小児病棟の手作りおやつにも力を入れ、
患者様を食
事から笑顔にできるようにサービス向上に努めている。
今後も食環境をより安全に豊かに変えるため、
継続してサポートしていきたい。
おわりに4●くろまるトレイメイク
(盛り付け作業)
に時間を要していた
料理を事前に食器盛り付けとしていたため、
時間を要し、
衛生管理が徹底されていなかった。
そのため、
トレイメイク時にコンベアベルト上で食器へ盛り付けすることにより、
作業を平準化することができた。
また、
盛り付
け時間を削減するために、
1つの料理あたりの盛り付け点数が多い献立については盛り付け点数の少ない献立へ変更した。
その他、
コールドテーブル・コールドワゴンを活用し、
トレイメイク中も料理を10°C以下
(平均7.1°C)
に維持することができた。
●くろまる中心温度が上がらない献立がある
クックサーブと異なり、
クックチルは料理の大きさ・質量に制限があるため、
献立を調整し、
こまめに温度測定を行い、
品温
管理と再加熱時間設定の検討を行い変更した。
●くろまる料理の仕上がり
特に揚げ物は、
カラッと揚げたての食感に近くなるよう粉の配合を工夫した。
焼き物は、
付け合わせの野菜量を多くしすぎな
いようにしたり、
反対に焦げやすい料理は付け合わせの水分を利用するなど改善を図った。
導入後出てきた課題やその対応方法3