hospital_北海道脳神経外科-1118

1佐々木 景子
[栄養管理課 主任 管理栄養士]
当院は1983年10月に
「患者様第一を旨とし、
患者様とご家族に安心
と満足を提供致します」
を基本理念に札幌市中央区に設立しました。
その後2012年4月に現在の西区八軒に病院を新築移転し、
血管内治療
設備の充実、
脊椎脊髄センターの開設、
パーキンソン病などの神経内科
疾患の診療体制の確立、
回復期リハビリテーション病棟の開設など、
急性期病院としての機能の充実が行われました。
これにより、
より高度
な脳神経外科治療が可能となり、
さらに、
早期から回復期まで一貫した
リハビリテーションが可能になりました。
あわせて脊椎脊髄センターで
は、
急性脊髄損傷、
腰椎疾患、
脊髄腫瘍や脊髄空洞症を含めて、
すべて
の脊椎・脊髄疾患の治療が行われるようになりました。
建物は地上5F、
地下1Fの構造になっており、
栄養管理課は職員食堂とともに地下1F
に配置されています。
運営形態は直営で、
「安心、
安全でおいしい治療食の提供と
それらを土台とした適切なクリニカルサービス」
を掲げ日々精
力的に活動しています。
医療法人社団 研仁会 北海道脳神経外科記念病院
施設概要1栄養管理課概要2病床数
ベッ
ド稼働率
平均在院日数
移転日
診療科
134床
(一般病床60床、
SCU3床、
回復期
リハビリ病床40床、
障害者病床31床)
95〜100%を維持
13〜15日程度で推移
2012年4月
脳神経外科、
脳神経内科、
心臓血管外科、
放射線科、
リハビリテーション科、
麻酔科、
歯科、
矯正歯科
しかくフロアガイド5F3F4FB1F1F2F管理棟
回復期リハビリテーション病棟 リハビリテーション室
障害者病棟
栄養管理課 職員食堂
外来診察室、
救急初療室、
放射線科、
臨床検査科、
医療相談室
一般病棟、
SCU、
手術室
くろまる直営方式
くろまる事務部、
診療技術部の両部門に所属
くろまる管理栄養士:4名 栄養士:1名
くろまる調理員:10名
(短時間パートを含む)
栄養管理課運用形態、
ビジョン3ニュークックチル
(再加熱カート)
導入事例 2医療法人社団 研仁会 北海道脳神経外科記念病院2)再加熱カート
EH保冷加熱カート
(28食)
サイドローディングタイプ((株)
エージーピー)
を採用することとし、
5台購入しました。1)ニュークックチルシステムの導入経緯
当院は2012年の新築移転を機に、
障害者病棟のベッド数を減らし、
回復期リハビリ病棟を新設すること、
つまり病棟編成を
変更することが決っていました。
その結果、
経口摂取患者数が増え、
経管栄養患者数が減ることが、
予想されました。
それらに対応するには、
当然のことながら、
1調理員を増員しなければならい
(最低でも3人、
可能なら5人)、その一方、2調理従事者の労務軽減と労働環境の整備がされていない、
3適温での提供ができていない=食事に対する患者満足度が低い、
4温菜は加熱調理後2時間以内の提供喫食、
冷菜は10°C以下の提供ができていない=食の安全が担保されていない、
など
栄養課には問題点も多数ありました。
このような状況下で経営効率、
患者満足度、
衛生管理、
危機管理を考えると、
これらに対
応できるシステムは、
ニュークックチルシステムしかないと考えました。
ニュークックチルシステムは、
安全な温度管理を保持しながら
「調理
(計画調理)」と
「チルド保管」
を行い、
それらを冷蔵状態
で盛り付け、
食事提供前に器ごと適温に再加熱して提供する方法のことです。
このようなニュークックチルシステムの特性を生かすことにより、
先の問題が解決できると判断しました。
他にニュークックチルシステムが
「計画調理」
になることから、
緊急災害時の対応に
「毎日備えられる」
と言う利点もあり、通常の災害時用食材と合わせて約1週間分の食料の担保が可能になりました。
合わせて新築移転の際に主要調理機器を非常用
電源に繋げるようにしたため、
2018年に発生した北海道胆振東部地震では、
それらの機器を利用して計画調理していた献立
を配膳することが可能でした。
(災害時用食材は使用しませんでした。)ニュークックチルシステムを導入した背景や設計コンセプト4型式
品名
食数
寸法
重量
電源
消費電力トレイピッチCH4‐1A328K
EH保冷加熱カート(28食)×ばつH1,448(mm)135kg
単相 AC100V 50/60Hz3.48kw120(mm)航空機内食の電気加熱
(Electric Heating)技術を応用
し、
保冷機能を備えたカートで1
トレイあたり2点
(主菜・副菜(汁))を加熱でき、
それぞれのメニューに応じて加熱時間
を調整することができます。
1枚のトレイから加熱することができ、
加熱したトレイの数
だけ電気を消費する省エネカートで軽量・コンパクトで厨房
面積を確保できない施設へカートが占有する面積あたりの
生産性が高いカートになります。
くろまる特徴
EH保冷加熱カート
(28食)
しかく操作しやすいタッチパネル式
分かりやすいボタン配置と見やすい画面設計により、
スムーズに操作
することが可能です。 3医療法人社団 研仁会 北海道脳神経外科記念病院3)導入までのプロセス
しかく厨房レイアウト
導入機器
❶ニュークックチルシステム調理に不可欠な機材
(ブラストチラーなど)
の選定、
厨房レイアウトの決定
開院2年前の2010年5月から院内で
「新築移転プロ
ジェクト」
が始動しました。
同時に栄養課でもニュークッ
クチルシステムを導入するために勉強会開催などを始め
ました。
くろまる2010年8月〜 ・
現状分析・問題点の抽出
くろまる2010年9月〜 ・
基本計画 新厨房の基本計画と運営構想
くろまる2011年6月〜 ・
実施計画 システムの構築
厨房面積250m2
(栄養課総面積303m2)
スチームコンベクションオーブン ケトル
カートプール ブラストチラー
IHコンロ フライヤー タンブルチラー 真空脱気包装機
医療法人社団 研仁会 北海道脳神経外科記念病院
常菜〜軟菜食までは通常の盛り付け後、
再加熱カートで再加熱しますが、
当院のムース
食は再加熱テストの結果、
温度調整がうまくできないとわかりました。
あわせてムース食
を摂取する患者は平均0〜3人/食と少なく、
摂取期間も短期間のため、
そのような患者
が発生した場合はクックサーブで対応する方が効率的と判断しました。4)運用例
全てのメニューを冷蔵状態で盛り付け、
メニューに合わせて個別に加熱を行います。
主食等は配膳直前に盛り付けます。
一番の特徴は朝食分を前日に盛り付け、
冷蔵保存する事です。
前日に盛り付けを行うことで朝食時の業務が軽減されました。
くろまる事前に再加熱カート1台をお借りし、
見直したメニューの試作と再加熱テストを繰り返しました。
くろまる2012年4月〜 ・
稼働4❷調理をスチームコンベクションオーブン主体に切り替えるためにメニューを見直しました
主食類後付け
通常食
フラットトレイ+ムース食
だし汁10cc だし汁30cc 解凍済 未解凍
行事食
さつま芋の
甘露煮 焦げ付き無 焦げ付き無
30ccの方が
煮汁が残って
良い9だし汁:10cc 10だ
し汁:30cc 結果
ムース食 焦げ付き無 再加熱の10分だと硬い
ムース食は
解凍
して
使用する
解凍済 未解凍 結果
くろまる移転前のスタッフ教育
盛り付けにラインスタイルを導入するため、
試作した料理を盛り付け台でトレイメイク
(盛り付け作業)
するトレーニングを実施しました。
1380食/日
(経管15%経口85%)
4献立例
5形態食、
自助食器対応
しかく現在の提供状況
2食事変更のオーダーストッ
プ時間
朝食→前日の17時 昼食→当日の11時 夕食→当日の15時
3主な提供食種
一般食、
エネルギーコン
トロール食、
腎臓食、
脂質コン
トロール食、
軟菜食、
ムース食など・形態食
医療法人社団 研仁会 北海道脳神経外科記念病院
滑り止めマット使用例
麻痺などで自助食器対応が必要な場合は自助食器の再加熱をスチームコンベクションオーブンで行い、
主食と共に後付け
しています。
(写真参照)
滑り止めマットを使用する場合は写真のように運用しています。5通常トレイ すべり止めマット+通常食器
半分のすべり止めマット
自助食器使用例
裏面にゴムが
付いています
フラットトレイ+滑り止めマット フラットトレイ+滑り止めマット+
自助食器
フラットトレイ・滑り止めマットや自助食器の使用1)ラインスタイルの導入によりトレイメイク時間が短縮された
以前のクックサーブ形式のトレイメイクは、
事前準備として...
1カートにトレイをセット→セットされたトレイに食札、
カトラリー、
補助食品等を載せる。
この1作業が終了後...
2料理を器に盛り付ける→盛り付けられた器を一度、
盛り付け台などで保管→器をトレイに載せる という複数の工程がか
かりました。 それが、
ラインスタイルを導入したことにより、
1,2の作業が同時に実施できるようになりました。
その結果、
提供食数は平均
100食/食→170食/食と1.7倍に増えたにも関わらず、
盛り付けに要する時間が大幅に短縮されました。
(1時間/食→15分/食)
これを可能にした要因にメニューの均一化、
アッセンブリーメニューの導入があります。
1メニューを盛り付けにかかる手数
を均一化するために出来上がり状態から逆算してメニューを考えています。
合わせて下処理、
調理作業を簡略化するために
一部既製品を利用し、
既製品をアレンジする、
既製品に食材を足し調理するなどの工夫をしています。
導入後の効果5くろまるトレイ
メイ
ク工程
昼食分 10時〜
夕食+朝食分 14時30分〜
主菜
(角皿) ・
食札・箸・飯友・飲み物・フルーツ・冷菜・味噌汁
副菜
(丸皿)ローダースターター 医療法人社団 研仁会 北海道脳神経外科記念病院62)
人件費の削減
曜日 月 火 水 木 金 土 日クッ
クサー
ブ 火 水 木 金 土 日 月クッ
クチル
下処理
調理
水/昼 金/朝 土/夕 火/朝 水/朝
水/夕 金/昼 日/朝 火/昼
木/朝 金/夕 日/昼 火/夕
木/昼 土/朝 日/夕
木/夕 土/昼 月/朝
月/昼
月/夕クッ
クサー
ブ 月 火 水 木 金 土 日クッ
クチル
水/昼 金/朝 土/夕 火/朝 水/朝
水/夕 金/昼 日/朝 火/昼
木/朝 金/夕 日/昼 火/夕
木/夕 土/昼 月/朝
月/昼
月/夕
5食 5食 7食 3食 1食
3日 4日 5日 5日 5日
72時間
生産食数
生産〜提供
/日数
経過時間 96時間 120時間 120時間 120時間
木/昼 土/朝 日/夕
医療法人社団 研仁会 北海道脳神経外科記念病院3)適温提供が可能になった
大量調理施設マニュアルでは
「温菜は加熱調理終了後2時間以内の提供喫食、
冷菜は10°C以下の提供」
とされています。
ただ、
クックサーブではこの条件を遵守することがかなり難しいのが現実です。
それが、
ニュークックチルシステムは厳密な温
度管理の元に作業を進め、
提供時は再加熱カートで温菜は75°C以上まで再加熱し、
冷菜は10°C以下で保管されたまま提供でき
ます。
その結果、
年一回実施する患者の嗜好調査でも
「温度」
については90%以上が
「適温」
との好評価を得ることができています。
表に示したように一週間の作業を平日の中3日間に集中させました。
以前のクックサーブは毎日の作業量がほぼ同量だった
ので、
必要な調理員数も毎日同数でした。
また、
行事食の時にはさらに人手が必要でした。
それがメニューを見直し作業の集約
を実施したことにより、
人員配置もそれに合わせて組むことができました。
その結果当初予定していた人員より少ない人数で
の業務が可能になりました。7 食を取り巻く環境は変わらず、
深刻な人手不足や原材料費の高騰など悪条件が重なっています。
新築移転後、
7年が過ぎ一連の
作業はほぼ安定していますが、
それでも新たに課題が発生します。1)新メニューの開発
先に述べたように当院の在院日数は約2週間ですが、
回復期リハ病棟、
障害者病棟の患者の在院日数は数ヶ月になる場合があり
ます。
当院は通常メニューを12週サイクルで構成し、
そこに20回/年程度の行事食を組んでいます。
それでも長期入院患者からは
「似たような献立」
との意見を頂く事があります。
そういった声に応えるべく新メニュー開発の必要性を強く感じています。3)人員配置の再検討
1週間の作業工程による人員配置は概ね現状で問題ないのですが、
一日の配置を再検討しています。
この7年間でマイナー
チェンジは実施していますが、2)の整理にも関係するため、
試行錯誤中です。2)作業効率を考慮した業務の整理
新築移転に際して業務を整理しクックチルに比べ、
かなり合理的効率的に改善しました。
ただ7年が経つとさらに整理できる
部分があると感じています。
例えば調理はスチームコンベクションオーブン主体ですが、
一部フライヤーや回転釜を使用します。
これらの調理機器を使用する献立とスチームコンベクションオーブンを使用する献立を、
1日の調理作業の中で1:4程度の
割合で組む事で効率的な調理ができることがわかりました。 他にラインスタイルで行う盛り付けでは、
条件のある患者
(禁食、
特殊食器使用者など)
の正確な人数を把握することが必要
なため、
給食管理システムの一部変更を検討中です。
導入後の課題と対応6 稼働当初は、
何もかもが初めてで毎日が手探り状態でしたが、
半年を過ぎた頃からこの方式の利点を十分発揮できるように
なってきました。
まだ、
改善すべき点はありますが、
〝患者様第一"をモットーに、
今まで以上のフードサービス
(安心・安全で、
おい
しい治療食の提供)
に取り組んでいきたいと考えています。
まとめ7

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