2.洪水への対応
平成16年7月に発生した新潟・福島豪雨で、新潟県内は大きな被害を受けた。ある地域の旧家では昔(江戸時代)、治水施設が貧弱だったことから水害が頻発しており、その対応として住居部分の地盤を高く(盛土)して自宅を建築したほか、自宅が浸水したときに避難する倉(水倉)までも作った。そのことでその旧家は、今回の新潟・福島豪雨で浸水を免れた。昔の人の洪水に対する知恵のたまものといってもいいと思う。
しかし、その旧家と同じ地域に近年建設された工場は、新潟・福島豪雨で1階部分が浸水して数十億円の損害があったそうだ。そのことから、「工場も盛土をしていれば損害を最小限に出来たのではないか。なぜ、その地域の災害の履歴を学ばなかったのか。」という識者の声を耳にした。考えてみると旧家の盛土は江戸時代に設置されたもので、当時は貧弱な治水施設しかなく、毎年数多くの洪水被害が発生する状況だったはずである。その多くの洪水に対する自己防衛の対策として盛土や水倉を設置したものである。
翻って現在は、河川堤防の整備が進み洪水による被害がほとんど発生することがない
状況である。そういった中で地域の災害の歴史から盛土をすべきであったという意見を言うのは江戸時代と現代の治水施設の比較からいかがなものかと思う。ただし、その旧家だけでなく近年建設した地域の住宅や工場などの建築物の多くが盛土していれば、その工場も盛土をすべきという意見があっても、もっともであると思う。
「信濃川下流域情報アーカイブ 川と水害 過去の水害(横田切れ等)での被災状況と水害に対する先人の働き」より
同左