おわりに
現代のダム建設工事に比べると黒部ダム建設当時の土木工事の施工方法は未熟で、安全性についても現代の工法に比べ問題が多くあったと思う。また現地の生活環境もよくなかったはずである。しかし、当時のダム建設に携わった人々は、多くの困難に耐え克服しながら、ダムを造るという使命に燃えて現場を動かしていったのだと思う。
多くの尊い人命が失われたことも事実である。そういった事実を踏まえダム工事を含め現代の全ての土木工事では安全重視の工事がおこなわれている。
また、ダムを造るということはダム技術者や作業員だけではなく、多くの人に支えられていることも事実である。本書では宇奈月ダム町の医師鈴木先生が登場するが、鈴木先生の医師として、また一人の人間としての苦心、苦労によって越冬隊員が助けてもらったことも大きい。また、私がダムの現場にいた時には、現場担当や積算担当の補助者として働いてもらった多くの人たちに助けられた。また賄いや掃除のおばさん達など多くの人たちに支えられたことで、巨大なダムが完成したことも忘れてはならない。
最後に本書の題名は「コミック版 プロジェクトX 挑戦者たち 厳寒の黒四ダムに挑む」であるが、当該ダムの正式名称は黒部ダムである。黒四ダムとは黒部ダムの別称で、黒部川第四発電所の発電用水の貯水ダムのであることから黒四ダムと呼ばれていることを申し添えておく。