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- 第2回運営協議会議事録 [2010年02月14日]
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文部科学省「問題行動等への対応におけるNPO等の活用に関する実践研究事業」
第2回運営協議会議事録
日時:平成22年2月3日(水)10:00〜11:45
場所:県民交流センター ミーティングルームB
出席者
三重県教育委員会生徒指導・健康教育室 生徒指導グループ
三重県若者自立支援センター 若者自立支援特命監
代々木高等学校校長
NPO法人チャレンジスクール三重 代表理事
副理事
常勤スタッフ 以上6名
※(注記)三重県教育委員会高校教育室 高校教育グループ 欠席
1 議事
(1)事業内容の中間報告
*「問題を抱える子ども等の支援事業」連絡協議会
報告者 NPO
平成22年1月22日、国立オリンピック記念青少年総合センターで文部科学省主催平成21年度「問題を抱える子ども等の支援事業」連絡協議会が開催された。生徒指導がご専門の東京理科大学 八並先生の基調講演のあと、3本の事例発表ということで、滋賀県竜王町教育委員会と福岡県福岡市教育委員会、そしてNPOとしてチャレンジスクール三重が発表させて頂いた。
教育委員会の取り組みは、教育行政と地域が連携をして町ぐるみで子どもの支援体制と作るというものであった。
チャレンジスクール三重の発表は、学校に代わるもう一つの学校「オルタナティブスクール」の取り組みとして、「様々な問題を抱える不登校の高校生や高校中退者に居場所の提供とそれぞれの課題に適した支援プログラムの開発」というテーマで20年度、21年度と取り組んできた研究事業について報告した。その中で、特にコミュニケーション能力に課題を抱える不登校生へのプログラムである昼間部の取り組み、またフリーターとして働く中退者へのプログラムである夜間部の取り組みを報告した。
昼間部の生徒たちについてこれまでは教員スタッフとして、生徒と接している経験から漠然と生徒たちの抱えている問題をみていたが、この研究事業でカウンセラーの先生と協働でいくつかの指標をつかって客観的にアセスメントをすることでより深刻な実態が見えてきた。
例えば人や社会に対する信頼感や安心感を測る「孤独感尺度」を取った結果、一般高校生の平均が37.42、予備校生が38.17、アルコール患者さんが43.58に対して、彼らは52.58と非常に強い孤独感や疎外感を抱いていることが見えてきた。
また自己効力感尺度では、一般の学生の平均が5から8点に対して、0点という生徒が何人もいて、彼らは不登校や引きこもりの挫折感から自己肯定感が持てずにいることがわかった。
こうしたアセスメントの結果をうけて、昼間部では「人は人の中で育つ、安心できる緩やかな集団の中でゆっくり学ぶ」を基本方針とし(1)居場所作り・コミュニケーション能力を高める活動(SST) (2)活力をつける活動 (3)基礎学力獲得のための学習支援 (4)進路決定に向けての支援の4つの柱で、20年度、21年度とのべ40名の生徒と関わっている。
(1)の中でエンカウンターやアサーショントレーニングといったソーシャルスキルに特化した活動も定期的にとりいれているが、それだけでうまくいくとは考えていない。スタッフの意識の中にSST的関わりは常に持ちつつも4つの柱で日々、生徒に関わっていく中で彼らの中に変化が生まれてくるのだと思っている。
一つ例を挙げたい。先日おこなった理科実験の中で、てこの原理やモーメントといった物理分野の学習内容だが、その導入で体験の少ない彼らに実際、大きな釘を金槌で打ち、大小の釘抜きで抜いてみるというところがあった。その作業をするためには、板を押さえていてもらうなど誰かと協力することが自然に必要になる。そんな中で生徒同士顔の見える関係ができ、居場所ができていく、又、やればできたという体験も積み重ねられていく、そうした下地の上にSSTに特化した活動が生きてくるのだと思う。
事業の最初にとったアセスメントと、現時点ではわずかではありますが、明らかに改善された数値が見られるようになってきた。何よりも、教室空気や生徒の表情が違ってきたことが実感として感じられる。
次に夜間部だが、いわゆる非行傾向が強い高校中退者たちの再チャレンジ支援として「高卒資格のための学びやすい環境作り、高卒資格取得後のキャリアアップ支援」を基本方針として取り組んでいる。
彼らは学校を飛び出してフリーターとして働いているものの、高卒資格がないことで不利な立場の労働力にされていることが多く、将来への展望へも持ちにくい状態にある。
そこで、定時制、通信制高校といった既存の制度のそれぞれの良さを活かし、仕事と毎日の夜学への通学は大変、あるいは自学自習の通信制では自信がないといった声を取り入れ、夜間に週2日、支援団体に通い、スクーリングやレポート作成を支援することで高卒資格取得をする仕組みを作った。また、高卒後のキャアリアアップ支援として、彼らが、自分が本当にしたかったことに気づき、チャレンジすることを後押しする進路指導をした。
この2年間でのべ14名の若者が利用してくれました。20年度最終学年の7名は幸い無事全員卒業資格を手にし、それぞれの進路に進んでいった。その内訳は4人が自分のやりたい仕事につくための自動車や医療関係の専門学校に進学、一人が農業大学校に、一人が正規雇用に就き、一人がアルバイトをしながら正規雇用を目指している。
学校や社会に対して、どちらかというと否定的な考えや気持ちを持っていることが多い彼らのアンケートからも、夜間部に満足しているという結果やスクールへの愛着が多くみられ嬉しく思っている。
彼らは一見やんちゃな若者に見えるが、実は大変、情のある若者たちである。彼らも同じ目的を持った仲間のいる居場所や、日常生活や将来設計に対して付かず離れず支える大人の存在を必要としていると実感している。
*先進校視察「京都ソクラ」
報告者 NPO
今年度の研究課題のひとつとして、高校に在籍しながら他に居場所を求める不登校生との支援の在り方をあげたが、先進例として2007年より京都市において私立学校の不登校生を対象に居場所を運営している「京都ソクラ」を見学させていただいた。
1.開設までの経緯
1993年 私学教師のための傾聴カウンセラートレーニングの実施をおもな事業とする私学教育相談所・学校カウンセリング研究所開設
2007年 京都私立学校の不登校生徒や引きこもりがちな生徒のために家庭以外の居場所を提供し、人間関係を築く力を養い、学校への復帰を目指す目的で「京都ソクラ」開設
2.おもな活動
(1)生徒・保護者・教師などの個別およびグループカウンセリング
(2)教師のカウンセラー養成研修
(3)各中学校・高校からの生徒の居場所
3.施設の概要
環 境:龍谷大学付属平安中学高校の校舎の一角にあるが、入り口は別で完全に切り
離されている。
施設・設備:相談室2室と開放的な広い空間、絨毯敷きのスペースや簡単な調理のできる
場所もある。
体 制:5名の事務局を中心に、元または現職教員、学校心理士、特別支援教育士、
臨床心理士、心理臨床士、等の免許所持者、障害児療育士や自閉症児童教育
経験者・または現在資格取得中のもの、社会事業経験者、カウンセリング
経験者、学生ボランティア等約35名のボランティアで運営されている。
4.利用の状況
利用までの流れ:学校関係者の来所→在籍校に通所許可願提出
→学校長名で入所申込書提出→入所許可
利 用 時 間:月曜〜金曜 午前10時〜午後2時
利 用 者 数:07年度3名、08年度4名、09年度7名
学校復帰まで流れ:「こどもに寄り添うこと」を前提。休息の期間→関係作りの期間
→カウンセリング導入
→適切な防衛と衝動性のより合理的な処理が確実になる時期
※(注記)この間、必要に応じて医者・専門家や家族の協力を依頼、在籍校の担任や保健室と連携して家庭訪問などを行う。
内容:基本的には自由、各学校からの課題がある場合ボランティアの援助のもとで自習
※(注記)出欠状況や課題については在籍校に報告する(出席については各校の判断)
利用者の様子
・来所して「何をするでもなし」「何がしたいのでもなし」ただ来て時間を過ごして帰宅している。
・ただひたすら遊んで、癒されたのか学校へ戻れた。
・スタッフの方とお話をして、元気になって学校へ戻れた。
・少しの間来ていたが、来なくなった。(理由は遊びが主になっていたから、「勉強したかった」)
5.今後の課題
・利用料は無料、運営経費は研究所の他の事業(カウンセラー・トレーニング等)からの収入があてられている。スタッフは無償ボランティアであるが、必要経費は不足がちである。
・私学全体での「取り組み」となるよう私学連合会・私学振興会を通じて利用を呼びかけているが、全体として理解が得られているとはいえない状況である。
・「傷ついた心を癒す場所」として、全くの自由もよいが、何か緩やかなメニューが必要ではないか。
・多くのボランティアで支えられているため、献身的な先生が不在になると危険という体制的な問題がある。
・教員の研修として利用することも可能で、官との連携は不可能ではない。
*学校訪問
報告者 NPO
平成21年11〜12月に中勢・南勢の高校27校を訪問した。先方の対応者は、大半が教頭等の管理職の先生である。訪問先では、当法人や今回の事業を紹介し、相談・連携について申し上げてきた。
しかし、現実的には学校としては他の居場所を紹介しにくいという点が問題であることも指摘していただいた。先方へ直接話しできたのは管理職の先生のみであり、現場にたつ他の教員にどれだけ当法人の存在が周知されたかは不明である。
今回の訪問の結果かどうかは不明だが、最近は高校から当法人への相談・問い合わせが増えてきている。当法人へは現在は全日制の高校に在籍しながら通う生徒はいなく、在籍中に体験の形で来て、そのまま転学になるというケースが目立つ。
(2)その他意見交換
*高校無償化の範囲について(高校教育室に質問)
予算措置が未決定だが、おそらく話は進んでいる。当法人でも、最近は保護者等からの相談において無償化の件を聞かれることもある。文部科学副大臣との話では、NPOまでの無償化は難しいという感じではあった。
討議については、高校教育室欠席のため、次回以降に持ち越し。
*高等学校と連携:生徒指導・教育相談担当者の会議等で話す機会がもらえないか(生徒指導・健康教育室に質問)
NPO
「高卒資格だけの生徒もいれば、自分を変えたくて来る生徒もいる。ただ、高卒資格だけ取得できても後へ続かなければ意味がない。定時制・通信制もあるが、なかなか行きにくい現状である。人は人の中で育つ、という言葉のように人間の中で生活が重要である。このため、意見交換も兼ねて表題のような場で話する機会をもらえたら、と思っている。」
生徒指導・健康教育室
「室長にも確認したが、来年度8月以降、生指の集まりの場がある時に、そのような機会を設けてもよいと考えている。特に、問題はない。
現状では、スクールの存在を知らない現場の先生もいて、保護者が調べてきて、相談にのるというケースもある。その際には、知らないものは安易に紹介しにくい。」
代々木高校
「今は他のフリースクール等も多様化しつつあり、塾・予備校等が参加し、ビジネス化しているところもある。大きくは2種類(学習中心と居場所中心)といろんなタイプがあるので、生徒が何をしに行くところなのか、が問題だろうと思う。」
生徒指導・健康教育室
「そのようなフリースクール等の情報を学校は持っていなく、学校が不安になり紹介できない。簡単に卒業できるという宣伝のようなものがあるが、非常に不安になる。
12月に機会を設定することは可能かもしれない。もしくは9月か。」
NPO
「生徒指導の研修だけでなく、教育相談の研修でも、そのような場を設けていただけるとありがたい。」
生徒指導・健康教育室
「はい。」
*自立支援センターとの連携:高卒資格がないために仕事が探しにくい若者に紹介してもらえないか(自立支援センターに質問)
NPO
「当法人に来ている生徒でも、元気になってきたので、仕事がしたいという生徒もいる。普通にアルバイトしにいくと、少し嫌なことを言われて辞めてきてしまうような生徒は多い。だから、スクールでなく外部で体験できるような場があるとよいが、そのような場を紹介するのは可能かどうか。」
若者自立センター
「就労体験とインターンシップとの間のものがほしい、とよく要望がある。今の雇用情勢の厳しい中、そのようなものを用意することが難しい情勢である。かつての事業で、団塊Jr.のフリーターを正規雇用させるものがあり、その際に開拓したインターンシップ先が300社あったが、今は景気悪く減少が激しく、社数を確保することが難しい。
就労体験はある。そこから就労先に変わるのが一番よいだろうと思っている。
お仕事広場も併設しているため、基本的には離職者やフリーターが対象だが、相談があれば対応はさせていただく。今年は就職面接会にも高校生が入ってもらうようになった。
また、新年度にはインターンシップ先の開拓のための予算化も行っている。」
代々木高校
「お金もらいながら、体験していくことが必要である。このためには、自分のところで職場を持ち、職場体験のための会社を作らざるをえない。体験では、生活リズムや考え方を学ぶのであり、技術を覚えるのでない。このため、行政の中で、このような職場を設けることはできないか。民間に発注している仕事などであるのではないか。
企業では無理な面がある。障害者の雇用ですら、今は危ない。こう考えると、職場体験用の職場を作るのが一番ではないか、と思っている。」
若者自立センター
「千葉県で知的障害者に県庁内の集配作業を行わせたことがある。しかし、これが失敗した。三重県では、県庁内に障害者がいる状況をうむために、試験的に臨時職員として採用している。1人でなく、数人で仕事に取り組ませるような環境があるとよい。
伊勢のサポートステーションでは、ホテルのシーツの交換で働く場を提供している例がある。同じく伊勢のサポステとあすなろ学園が水耕栽培を始めている。伊勢のサポステでは、緊急雇用で一人採用し、指導者としての役割を担わせている。」
NPO
「仕事させるのはいいが、結局スタッフがやったり見たりせねばならず、大変な状況になることが多い。」
若者自立センター
「緊急雇用の財源がおりてきているので、こういう仕事ができるよ、ということを教えてもらえれば、それで雇用していくのは不可能ではない。どういうことができるのか、によって予算化が可能である。」
NPO
「パソコンのデータ入力はできるのではないか。」
NPO
「スクールでは元気、外部へ出るとダメでという生徒がいる。卒業後いきなり就労ではうまくいかないケースも多い。できれば在学中から、就労支援を行ってやりたい。そうすれば、問題が起きてもこちらでフォローが出来、就労につなげられる。しかし、このパターンの生徒は、内部でもつ企業体では甘えが出る可能性は大いにある。」
代々木高校
「水耕栽培は必ず結果が出る点がわかりやすくよい。水耕は汚れないので、子どもたちの泥まみれへの抵抗感も少ない。」
若者自立センター
「あすなろの名島さんが水耕栽培している。嬉野の中川駅の西の寿司屋さんの近くに事務所がある(自立支援のネットワークにも入っている)。そこでは、身体障害者センターの掃除や墓の掃除をしている。その中で、緊急雇用の基金を使って水耕栽培している。」
若者自立センター
「当センターでも学校訪問している。サポートステーションの産業カウンセラーがまわって相談を受けている。学校にはスクールカウンセラーや求人開拓員等がいて、その方々との連携は重要である。中退者が対象であるが、中退しそうな生徒も対象としている。しかし、産業カウンセラーで対応できない生徒や、勉強も見てほしいという生徒もいるため、チャレンジスクールとの連携が可能であるように思う。教委との連携も必要である。」
(3)次回予定
・次回は3月17日(水)予定。
第2回運営協議会議事録
日時:平成22年2月3日(水)10:00〜11:45
場所:県民交流センター ミーティングルームB
出席者
三重県教育委員会生徒指導・健康教育室 生徒指導グループ
三重県若者自立支援センター 若者自立支援特命監
代々木高等学校校長
NPO法人チャレンジスクール三重 代表理事
副理事
常勤スタッフ 以上6名
※(注記)三重県教育委員会高校教育室 高校教育グループ 欠席
1 議事
(1)事業内容の中間報告
*「問題を抱える子ども等の支援事業」連絡協議会
報告者 NPO
平成22年1月22日、国立オリンピック記念青少年総合センターで文部科学省主催平成21年度「問題を抱える子ども等の支援事業」連絡協議会が開催された。生徒指導がご専門の東京理科大学 八並先生の基調講演のあと、3本の事例発表ということで、滋賀県竜王町教育委員会と福岡県福岡市教育委員会、そしてNPOとしてチャレンジスクール三重が発表させて頂いた。
教育委員会の取り組みは、教育行政と地域が連携をして町ぐるみで子どもの支援体制と作るというものであった。
チャレンジスクール三重の発表は、学校に代わるもう一つの学校「オルタナティブスクール」の取り組みとして、「様々な問題を抱える不登校の高校生や高校中退者に居場所の提供とそれぞれの課題に適した支援プログラムの開発」というテーマで20年度、21年度と取り組んできた研究事業について報告した。その中で、特にコミュニケーション能力に課題を抱える不登校生へのプログラムである昼間部の取り組み、またフリーターとして働く中退者へのプログラムである夜間部の取り組みを報告した。
昼間部の生徒たちについてこれまでは教員スタッフとして、生徒と接している経験から漠然と生徒たちの抱えている問題をみていたが、この研究事業でカウンセラーの先生と協働でいくつかの指標をつかって客観的にアセスメントをすることでより深刻な実態が見えてきた。
例えば人や社会に対する信頼感や安心感を測る「孤独感尺度」を取った結果、一般高校生の平均が37.42、予備校生が38.17、アルコール患者さんが43.58に対して、彼らは52.58と非常に強い孤独感や疎外感を抱いていることが見えてきた。
また自己効力感尺度では、一般の学生の平均が5から8点に対して、0点という生徒が何人もいて、彼らは不登校や引きこもりの挫折感から自己肯定感が持てずにいることがわかった。
こうしたアセスメントの結果をうけて、昼間部では「人は人の中で育つ、安心できる緩やかな集団の中でゆっくり学ぶ」を基本方針とし(1)居場所作り・コミュニケーション能力を高める活動(SST) (2)活力をつける活動 (3)基礎学力獲得のための学習支援 (4)進路決定に向けての支援の4つの柱で、20年度、21年度とのべ40名の生徒と関わっている。
(1)の中でエンカウンターやアサーショントレーニングといったソーシャルスキルに特化した活動も定期的にとりいれているが、それだけでうまくいくとは考えていない。スタッフの意識の中にSST的関わりは常に持ちつつも4つの柱で日々、生徒に関わっていく中で彼らの中に変化が生まれてくるのだと思っている。
一つ例を挙げたい。先日おこなった理科実験の中で、てこの原理やモーメントといった物理分野の学習内容だが、その導入で体験の少ない彼らに実際、大きな釘を金槌で打ち、大小の釘抜きで抜いてみるというところがあった。その作業をするためには、板を押さえていてもらうなど誰かと協力することが自然に必要になる。そんな中で生徒同士顔の見える関係ができ、居場所ができていく、又、やればできたという体験も積み重ねられていく、そうした下地の上にSSTに特化した活動が生きてくるのだと思う。
事業の最初にとったアセスメントと、現時点ではわずかではありますが、明らかに改善された数値が見られるようになってきた。何よりも、教室空気や生徒の表情が違ってきたことが実感として感じられる。
次に夜間部だが、いわゆる非行傾向が強い高校中退者たちの再チャレンジ支援として「高卒資格のための学びやすい環境作り、高卒資格取得後のキャリアアップ支援」を基本方針として取り組んでいる。
彼らは学校を飛び出してフリーターとして働いているものの、高卒資格がないことで不利な立場の労働力にされていることが多く、将来への展望へも持ちにくい状態にある。
そこで、定時制、通信制高校といった既存の制度のそれぞれの良さを活かし、仕事と毎日の夜学への通学は大変、あるいは自学自習の通信制では自信がないといった声を取り入れ、夜間に週2日、支援団体に通い、スクーリングやレポート作成を支援することで高卒資格取得をする仕組みを作った。また、高卒後のキャアリアアップ支援として、彼らが、自分が本当にしたかったことに気づき、チャレンジすることを後押しする進路指導をした。
この2年間でのべ14名の若者が利用してくれました。20年度最終学年の7名は幸い無事全員卒業資格を手にし、それぞれの進路に進んでいった。その内訳は4人が自分のやりたい仕事につくための自動車や医療関係の専門学校に進学、一人が農業大学校に、一人が正規雇用に就き、一人がアルバイトをしながら正規雇用を目指している。
学校や社会に対して、どちらかというと否定的な考えや気持ちを持っていることが多い彼らのアンケートからも、夜間部に満足しているという結果やスクールへの愛着が多くみられ嬉しく思っている。
彼らは一見やんちゃな若者に見えるが、実は大変、情のある若者たちである。彼らも同じ目的を持った仲間のいる居場所や、日常生活や将来設計に対して付かず離れず支える大人の存在を必要としていると実感している。
*先進校視察「京都ソクラ」
報告者 NPO
今年度の研究課題のひとつとして、高校に在籍しながら他に居場所を求める不登校生との支援の在り方をあげたが、先進例として2007年より京都市において私立学校の不登校生を対象に居場所を運営している「京都ソクラ」を見学させていただいた。
1.開設までの経緯
1993年 私学教師のための傾聴カウンセラートレーニングの実施をおもな事業とする私学教育相談所・学校カウンセリング研究所開設
2007年 京都私立学校の不登校生徒や引きこもりがちな生徒のために家庭以外の居場所を提供し、人間関係を築く力を養い、学校への復帰を目指す目的で「京都ソクラ」開設
2.おもな活動
(1)生徒・保護者・教師などの個別およびグループカウンセリング
(2)教師のカウンセラー養成研修
(3)各中学校・高校からの生徒の居場所
3.施設の概要
環 境:龍谷大学付属平安中学高校の校舎の一角にあるが、入り口は別で完全に切り
離されている。
施設・設備:相談室2室と開放的な広い空間、絨毯敷きのスペースや簡単な調理のできる
場所もある。
体 制:5名の事務局を中心に、元または現職教員、学校心理士、特別支援教育士、
臨床心理士、心理臨床士、等の免許所持者、障害児療育士や自閉症児童教育
経験者・または現在資格取得中のもの、社会事業経験者、カウンセリング
経験者、学生ボランティア等約35名のボランティアで運営されている。
4.利用の状況
利用までの流れ:学校関係者の来所→在籍校に通所許可願提出
→学校長名で入所申込書提出→入所許可
利 用 時 間:月曜〜金曜 午前10時〜午後2時
利 用 者 数:07年度3名、08年度4名、09年度7名
学校復帰まで流れ:「こどもに寄り添うこと」を前提。休息の期間→関係作りの期間
→カウンセリング導入
→適切な防衛と衝動性のより合理的な処理が確実になる時期
※(注記)この間、必要に応じて医者・専門家や家族の協力を依頼、在籍校の担任や保健室と連携して家庭訪問などを行う。
内容:基本的には自由、各学校からの課題がある場合ボランティアの援助のもとで自習
※(注記)出欠状況や課題については在籍校に報告する(出席については各校の判断)
利用者の様子
・来所して「何をするでもなし」「何がしたいのでもなし」ただ来て時間を過ごして帰宅している。
・ただひたすら遊んで、癒されたのか学校へ戻れた。
・スタッフの方とお話をして、元気になって学校へ戻れた。
・少しの間来ていたが、来なくなった。(理由は遊びが主になっていたから、「勉強したかった」)
5.今後の課題
・利用料は無料、運営経費は研究所の他の事業(カウンセラー・トレーニング等)からの収入があてられている。スタッフは無償ボランティアであるが、必要経費は不足がちである。
・私学全体での「取り組み」となるよう私学連合会・私学振興会を通じて利用を呼びかけているが、全体として理解が得られているとはいえない状況である。
・「傷ついた心を癒す場所」として、全くの自由もよいが、何か緩やかなメニューが必要ではないか。
・多くのボランティアで支えられているため、献身的な先生が不在になると危険という体制的な問題がある。
・教員の研修として利用することも可能で、官との連携は不可能ではない。
*学校訪問
報告者 NPO
平成21年11〜12月に中勢・南勢の高校27校を訪問した。先方の対応者は、大半が教頭等の管理職の先生である。訪問先では、当法人や今回の事業を紹介し、相談・連携について申し上げてきた。
しかし、現実的には学校としては他の居場所を紹介しにくいという点が問題であることも指摘していただいた。先方へ直接話しできたのは管理職の先生のみであり、現場にたつ他の教員にどれだけ当法人の存在が周知されたかは不明である。
今回の訪問の結果かどうかは不明だが、最近は高校から当法人への相談・問い合わせが増えてきている。当法人へは現在は全日制の高校に在籍しながら通う生徒はいなく、在籍中に体験の形で来て、そのまま転学になるというケースが目立つ。
(2)その他意見交換
*高校無償化の範囲について(高校教育室に質問)
予算措置が未決定だが、おそらく話は進んでいる。当法人でも、最近は保護者等からの相談において無償化の件を聞かれることもある。文部科学副大臣との話では、NPOまでの無償化は難しいという感じではあった。
討議については、高校教育室欠席のため、次回以降に持ち越し。
*高等学校と連携:生徒指導・教育相談担当者の会議等で話す機会がもらえないか(生徒指導・健康教育室に質問)
NPO
「高卒資格だけの生徒もいれば、自分を変えたくて来る生徒もいる。ただ、高卒資格だけ取得できても後へ続かなければ意味がない。定時制・通信制もあるが、なかなか行きにくい現状である。人は人の中で育つ、という言葉のように人間の中で生活が重要である。このため、意見交換も兼ねて表題のような場で話する機会をもらえたら、と思っている。」
生徒指導・健康教育室
「室長にも確認したが、来年度8月以降、生指の集まりの場がある時に、そのような機会を設けてもよいと考えている。特に、問題はない。
現状では、スクールの存在を知らない現場の先生もいて、保護者が調べてきて、相談にのるというケースもある。その際には、知らないものは安易に紹介しにくい。」
代々木高校
「今は他のフリースクール等も多様化しつつあり、塾・予備校等が参加し、ビジネス化しているところもある。大きくは2種類(学習中心と居場所中心)といろんなタイプがあるので、生徒が何をしに行くところなのか、が問題だろうと思う。」
生徒指導・健康教育室
「そのようなフリースクール等の情報を学校は持っていなく、学校が不安になり紹介できない。簡単に卒業できるという宣伝のようなものがあるが、非常に不安になる。
12月に機会を設定することは可能かもしれない。もしくは9月か。」
NPO
「生徒指導の研修だけでなく、教育相談の研修でも、そのような場を設けていただけるとありがたい。」
生徒指導・健康教育室
「はい。」
*自立支援センターとの連携:高卒資格がないために仕事が探しにくい若者に紹介してもらえないか(自立支援センターに質問)
NPO
「当法人に来ている生徒でも、元気になってきたので、仕事がしたいという生徒もいる。普通にアルバイトしにいくと、少し嫌なことを言われて辞めてきてしまうような生徒は多い。だから、スクールでなく外部で体験できるような場があるとよいが、そのような場を紹介するのは可能かどうか。」
若者自立センター
「就労体験とインターンシップとの間のものがほしい、とよく要望がある。今の雇用情勢の厳しい中、そのようなものを用意することが難しい情勢である。かつての事業で、団塊Jr.のフリーターを正規雇用させるものがあり、その際に開拓したインターンシップ先が300社あったが、今は景気悪く減少が激しく、社数を確保することが難しい。
就労体験はある。そこから就労先に変わるのが一番よいだろうと思っている。
お仕事広場も併設しているため、基本的には離職者やフリーターが対象だが、相談があれば対応はさせていただく。今年は就職面接会にも高校生が入ってもらうようになった。
また、新年度にはインターンシップ先の開拓のための予算化も行っている。」
代々木高校
「お金もらいながら、体験していくことが必要である。このためには、自分のところで職場を持ち、職場体験のための会社を作らざるをえない。体験では、生活リズムや考え方を学ぶのであり、技術を覚えるのでない。このため、行政の中で、このような職場を設けることはできないか。民間に発注している仕事などであるのではないか。
企業では無理な面がある。障害者の雇用ですら、今は危ない。こう考えると、職場体験用の職場を作るのが一番ではないか、と思っている。」
若者自立センター
「千葉県で知的障害者に県庁内の集配作業を行わせたことがある。しかし、これが失敗した。三重県では、県庁内に障害者がいる状況をうむために、試験的に臨時職員として採用している。1人でなく、数人で仕事に取り組ませるような環境があるとよい。
伊勢のサポートステーションでは、ホテルのシーツの交換で働く場を提供している例がある。同じく伊勢のサポステとあすなろ学園が水耕栽培を始めている。伊勢のサポステでは、緊急雇用で一人採用し、指導者としての役割を担わせている。」
NPO
「仕事させるのはいいが、結局スタッフがやったり見たりせねばならず、大変な状況になることが多い。」
若者自立センター
「緊急雇用の財源がおりてきているので、こういう仕事ができるよ、ということを教えてもらえれば、それで雇用していくのは不可能ではない。どういうことができるのか、によって予算化が可能である。」
NPO
「パソコンのデータ入力はできるのではないか。」
NPO
「スクールでは元気、外部へ出るとダメでという生徒がいる。卒業後いきなり就労ではうまくいかないケースも多い。できれば在学中から、就労支援を行ってやりたい。そうすれば、問題が起きてもこちらでフォローが出来、就労につなげられる。しかし、このパターンの生徒は、内部でもつ企業体では甘えが出る可能性は大いにある。」
代々木高校
「水耕栽培は必ず結果が出る点がわかりやすくよい。水耕は汚れないので、子どもたちの泥まみれへの抵抗感も少ない。」
若者自立センター
「あすなろの名島さんが水耕栽培している。嬉野の中川駅の西の寿司屋さんの近くに事務所がある(自立支援のネットワークにも入っている)。そこでは、身体障害者センターの掃除や墓の掃除をしている。その中で、緊急雇用の基金を使って水耕栽培している。」
若者自立センター
「当センターでも学校訪問している。サポートステーションの産業カウンセラーがまわって相談を受けている。学校にはスクールカウンセラーや求人開拓員等がいて、その方々との連携は重要である。中退者が対象であるが、中退しそうな生徒も対象としている。しかし、産業カウンセラーで対応できない生徒や、勉強も見てほしいという生徒もいるため、チャレンジスクールとの連携が可能であるように思う。教委との連携も必要である。」
(3)次回予定
・次回は3月17日(水)予定。
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