2020年6月1日 / 最終更新日時 : 2020年7月24日 ocdf 組織開発

キャリアコンサルタントの私が組織開発に興味を持った理由

中小企業へのキャリアコンサルティングの勧め

若手社員の定着支援

キャリアコンサルタントが国家資格として認定された2016年頃、ある中小企業の経営者の方に「『若手社員の定着』に繋がります」とキャリアコンサルティングの実施を勧めると、「社員に変に知恵をつけて、会社を辞められたら困る」と断られました。

その頃、キャリアコンサルタントは人材斡旋会社のエージェントのように転職を勧める人と思う人もいました。
当時、東京都ジョブ・カードセンターで中小企業へのジョブ・カード制度普及業務を担当していた私は、

・入社1年目の正社員の定着率の高い企業群と低い企業群を比較で最も差が大きい項目が「定期的な面談、カウンセリングの実施」という調査結果((注記)1)や、
・転職に関する相談があった時には、相談者の話をよく聴いた上で本人の自己理解・仕事理解を促して組織内に留める方向で支援することが殆どで、本人にリスクを伴う転職は勧めない

という、日本企業におけるキャリアコンサルティングの実態を紹介しながらキャリアコンサルティングの理解者の拡大に努めました。

企業内キャリアコンサルティングと組織開発

組織活性化の推進役としてのキャリアコンサルタント

厚生労働省は、2017年度からスタートしたセルフ・キャリアドック制度の導入目的は「社員の自律・成長と組織の活性化(生産性向上)」として、手厚い助成金支援制度も備えて新制度普及を推進しました。
一方、資格は保持するも企業でのキャリアコンサルタントとしての実践経験のない私は、どうすれば自分が「組織の活性化」に貢献できるか、なかなか発想できず悩みました。

企業内キャリアコンサルタントのバイブルとの出会い

そんな中、日本の企業内キャリアコンサルティングの実態と今後の方向性をまとめた「企業内キャリア・コンサルティングとその日本的特質」((注記)2)に出会い、企業内キャリアコンサルタントとしての生き方(働き方)に悩んでいた私は、大きな気づきと自信を得ました。

その理由は2点あります。

ひとつは、企業内キャリアコンサルティングの主な機能が以下の3つに整理できたこと。

1リテンション機能(人材維持、引き止め)
2関係調整・対話促進機能(上司への支援・介入)
3意味付与・価値提供機能(働くことの意味や価値の理解)

もうひとつは、企業内キャリアコンサルタントの支援には、いくつかの発達段階があること知ったことです。
企業におけるキャリアコンサルティングの内容は個人を対象とした「個別面談」の段階から、上司や職場、経営層を対象にした「個を超えた支援」((注記)3)へと機能的役割が段階的に広がり、その結果組織の活性化(=組織開発)へと繋がっていくという流れを事例を踏まえて理解できました。

そして、「組織開発は今後の企業内キャリアコンサルタントの重要なコンピテンシー」であると私に気づかせてくれたのです。

【企業内キャリア・コンサルティングの発達段階】

[画像:企業内キャリア・コンサルティングの発達段階]

出所:「企業内キャリア・コンサルティングとその日本的特質」((注記)2)

組織キャリア開発士としてのこれから

キャリアコンサルタントを取り巻く社会環境の変化に対応して、今年4月よりキャリアコンサルタントの能力要件に「組織開発・組織活性化、人事との協業、社会とのかかわり」といったテーマが追加されました。
私が組織開発という言葉に出会ってから3年。
私は今、組織キャリア開発士((注記)4)として学んだ知識や技能(組織や経営者への介入・働きかけ方等)を生かしてこれからも「個人の自律・成長」支援や「組織の活性化」の推進者(チェンジ・エージェント)としての活動を通して、日本の企業の成長に貢献したいと思います。

注釈:
(注記)1:「人材(人手)不足の現状等に関する調査(企業調査)及び働き方のあり方等に関する調査(労働者調査)結果」(2016.6 労働政策研究・研修機構)
(注記)2:「企業内キャリア・コンサルティングとその日本的特質-自由記述調査およびインタビュー調査結果-」 (2017.5 労働政策研究・研修機構)
(注記)3:「個を超えた支援」の例
上司への支援・介入(上司-部下間の関係調整:カウンセリング),職場への介入(エンロール機能:職場変革チーム支援)、経営層へのアプローチ(キャリア情報の提供機能)
(注記)4:一般社団法人 地域連携プラットフォームが開催している「組織キャリア開発士養成講座」修了生に付与される資格。資格の詳細はこちら

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(三田 勝彦)