僕はプレス屋の3代目である。
町工場のオヤジである。
日経新聞は読まん。
愛読の新聞は日刊工業新聞。
愛読の雑誌は「プレス技術」
と自分に言いきかせていた。
だから、金融や証券業界にはまったく興味を持っていなかった。
ベンチャーキャピタルの存在など知るはずもなかった。
製造業の株主が増えてきて、なんとかスタッフが食えるようになった頃。
(僕と安井さんも一年間無給だったがようやく少しだけ給与をいただくようになった)
ベンチャーキャピタルなる連中から電話が掛かってくるようになった。
「一度、社長にご挨拶をかねて訪問させていただけませんか?」
「御社の事業内容に興味を持ちまして・・・」
「素晴らしい事業をやってらっしゃいますねぇ」
などなど言いながら、たくさんのベンチャーキャピタルが来るようになった。
1999年8月に日経インターネットアワードを受賞してからである。
さすが、日経。
そして、毎日のようにいろいろな会社から電話がかかってくる。
証券会社
ベンチャーキャピタル
商工会議所
経済産業省
大学
生命保険
ITバブルの到来である。
ある日、某IT通信系のベンチャーキャピタルから電話があった。
「10億円出資させていただきたい」
会ってみると、20代後半にもいかないような若い担当者である。
こんな若者が10億円の権限を持って、こんな淡路町の辺鄙な事務所に来て、
10億円出資したい、と言うのだ。
僕は不思議な気持ちになりながら話を聞いていた。
のちに聞いた話ではあるが、このベンチャーキャピタルは300億の予算を1年間で20人の担当者でばら撒いていた(出資していた)らしい。
ということは一人当たり15億の予算を出資しなければならないのである。
条件はIT企業であれば猫でも杓子でもよい、という感じであった。
スギ(杉浦元)の加入以来、土曜日の会議の中で、ベンチャーキャピタルからの出資を受入れようということは検討していた。
スギは、ベンチャーキャピタルのNIF(日本インベストメントファイナンス)出身である。
スギはベンチャーキャピタルに出資してもらうにしても、ただお金を出すのではなくいろいろな面で協力をしていただける株主として、
ベンチャーキャピタルに出資してもらおう、という考え方を持っていた。
そこで必要となるのが、事業計画である。
NCネットワークが、今後、どんな事業をやっていくのか?
毎週、毎週、土曜日に会議を重ねていった。
・インターネット広告
・中古工作機械仮想市場
・CAD/CAMショールーム
・金型プレート仮想市場
などが収益の源泉になる事業計画書をつくった。
50ページにもなるような事業計画書である。
1.経営方針
2.事業の展望と市場の状況
3.事業の概要と戦略
4.今後の事業別詳細と戦略
5.初年度利益計画
6.年次利益計画
7.資金繰計画及び資金計画
8.主要販売先
9.主要仕入先・外注先・販売方法
10.沿革
11.会社組織
以上が事業計画の目次である。
1 Webコミュニティ事業
(1) コミュニティ運営事業(既存事業)
(2) オークション事業(新規事業)
(3) CADデータ変換サービス(新規事業)
2 加工品販売事業
(1) 試作品受発注事業(新規事業)
(2) 機械加工受発注事業
1 プレート加工受発注事業(新規事業)
2 金型製作受発注事業(新規事業)
事業内容としては、上記の計画を打ち立てた。
この時にはまだ、エミダス・パートナーの構想もなかった。
2000年春、5社の実業系ベンチャーキャピタルからの出資を受入れることにした。
JAFCO(野村証券系)
NIF(大和証券系)
日本ベンチャーキャピタル
オリックスキャピタル
安田企業投資
これらのベンチャーキャピタルから、総額で約3億円の調達をした。
うち半分を資本金とし、残りを資本準備金とした。
上記事業を推進するために本格的に企業としてスタートしたのである。
そして、事業を推進するために人を募集していく。