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koudansyou-古典と現代

主に平安文学・文化についてのつれづれ書き(画き)

蝉のうた

毎日、暑い日が続いています。7月も最後の日となりました。

家族は暑くても水筒を持って公園に遊びに行きますが、夏は「蝉取り」も恒例行事です
(もちろんキャッチ&リリースで)。

家にいても、蝉の声は聞こえますが、はてそういえば、「蝉の歌」、夏らしい歌はどのようなものがあったかな、と気になりました(秋のイメージで詠まれた歌もあるので)。

和歌における「蜩(ひぐらし)/日暮らし(一日中の意)」の掛詞や、「空蝉(うつせみ)/現身」の意の二重性は、蝉が物悲しく鳴き続ける声や抜け殻の空しい身を象徴しています。

また『万葉集』から見られる「空蝉」の語ですが、『源氏物語』では、光源氏の侵入に気づいた人妻が、薄衣だけを残して寝所を抜け出たことから、「空蝉」と呼ばれます。

『源氏物語』では、この「空蝉」の物語に集中して「蝉」の歌が詠まれます(それ以前の『うつほ物語』にそのような特徴はありません)。

『古今和歌集』には、十数首、蝉の歌がありますが、特に印象に残った歌をあげておきます。

物名・「唐萩」448 よみ人しらず
空蝉のからは木ごとにとどむれどたまのゆくへを見ぬぞかなしき
(蝉の抜け殻が木々に残っているように、亡骸は棺にあるけれど、抜け出た魂の行方がわからないのが悲しい)
DSC00318
(現実には一本の木に集中することも・笑)

恋一・543 よみ人しらず
明けたてば蝉のをりはへ鳴きくらし夜は蛍の燃えこそわたれ

(夜が明けると、明け方から蝉が鳴き続けるように昼間は泣き暮らし、夜は夜で、蛍火が燃え続けるように恋の炎を燃やし続けているよ)
蝉のうた1

雑上・ 876 紀友則
蝉の羽(は)の夜の衣(ころも)はうすけれど移り香こくも匂ひぬるかな
(蝉の羽のような夜着は薄いけれど、その衣に焚き染められた移り香は濃く匂っていたよ)

semi
(ミンミンゼミでしょうか。うすく透き通った羽が綺麗です)

鳴く蝉たちと、残された抜け殻──それは千年以上前から変わらない、儚い夏の風景でした。




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