[フレーム]

koudansyou-古典と現代

主に平安文学・文化についてのつれづれ書き(画き)

印刷博物館のたのしさ

昨日でようやく春学期の授業終了。これから採点に入りますが、それにしても、まさかまさかの四度目の緊急事態宣言!くずれ落ちましたよ。もう。

大学院生と印刷博物館で開催されていた企画展「和書ルネサンス」(展示は終了)を
見学に行く計画を立てていましたが、あっさり打ち砕かれました。

今期2回目の見学中止。心が折れそう。

とりあえず宣言が出る前に、急ぎ、フランスから350年ぶりに里帰りし、今回日本初公開となる盛安本「源氏物語絵巻」の夕顔巻を見るべく、ひとりで印刷博物館に向かいました。

印刷博物館は、凸版印刷が2000年に設立した博物館です。私の凸版印刷のイメージは、大学のサークルOBが勤める会社で、同会社の吹奏楽団から器材をお借りしていたことを思い出します。

そんなことを考えながら、歩いていくと、以下の看板を目にしました。

DSC_0216
(あれ?)

DSC_0217
(まあ!そうなの)

そして、もう少し歩いていくと......

DSC_0218

かわいい看板がお出迎え。

DSC_0219
たくさんポスターが貼ってあります。

DSC_0220
ビル内の入口です。事前予約が必要。

さて、企画展の前に、印刷の歴史をたどる常設展がありましたが、こちらも大変おもしろかったです。日本の印刷というと、近世初期の嵯峨本(古活字本)、そして浮世絵や読み本等の版本がイメージされますが、印刷自体は、奈良時代から存在します。それが百万塔陀羅尼です(世界最古の印刷物)。
百万塔陀羅尼
(このような約20cmの塔の中に印刷されたお経が入れられています)

こんな小さなお経を入れた塔が百万基も作られたというのですから、その技術と熱意には驚かされます。

ただ、この後、中世の五山版(禅僧によって刊行された木版本)まで印刷物は影を潜め、秀吉の
朝鮮出兵による銅活字の流入が、活字印刷の隆盛をもたらします。

これまで、印刷されてきたのは、仏典や漢籍でしたが、古典作品も、近世初期から印刷される
ようになります。雲母(きら)を刷り込んだ美しい用紙に、くずし字の活字を組み合わせて
刷られた美しい版本は、嵯峨本と呼ばれ、美術品としても評価されます。『伊勢物語』等、
こちらも展示されていました。(ただし後に普及するのは、一枚の版木に彫る整版印刷です)

常設展では、世界の印刷、また日本の方も近代まで紹介されており、新聞や商品、グラビア
印刷など、私の世代からすると少し前の懐かしい印刷物も多数ありました。

そしてお目当ての企画展は、「源氏物語コーナー」からはじまり、嬉しい限り。絵巻で見た夕顔
(もののけに取り憑かれる)は、美しい死に顔で描かれていました。泣いている源氏と右近の顔が
袖で隠されているので、余計にただ寝ているような夕顔に目がいきます和書ルネサンス(みどころ)|展覧会 | 印刷博物館 Printing Museum, Tokyo (printing-museum.org)

また、展示中「当時もっとも多く印刷された古典作品は?」と題し、順位が示されていました。

1(なんでしょう?) 2太平記 3伊勢物語 3平家物語 5日本書紀 6源氏物語 7保元・平治物語 8観世流謡本 9大和物語 10昨日は今日の物語

平安時代の書物が3点入っていますが、やはり江戸期は合戦物が人気ですね。1位については、最後にお知らせしますね。みなさんも、どうぞ考えてみてください。

実は、私が企画展の中でもっとも印象に残ったのは、石山寺の「紫式部聖像」(室町時代)。大きさの迫力もさることながら、x線で明らかになった式部をとりまく『源氏物語』の場面絵が面白かったです。

夕顔巻、薄雲巻、若菜巻、等、近世以降、定番化した構図ではないのが新鮮でしたね。

あまりにじっくり観覧したので、帰りはやや足が痛くなりましたが、充実したひとときでした。
次は必ず学生たちと一緒に見に行きたいと思います。

それでは最後に答えです。













1位は、「徒然草」でした!






このページのトップヘ

traq

AltStyle によって変換されたページ (->オリジナル) /