海竜王の后─須磨・明石
先日、家族の郷里から神戸へ移動し、そこで1泊。今度は私の郷里・九州へ向かう途中、明石に立ち寄りました。
akasi
(上の画は、歌舞伎で見た「海老蔵竜王」と物語の明石の君です)
「明石」といえば、『源氏物語』では須磨に流離した光源氏が住吉神の導きにより移動する土地。そこで、源氏は自分を迎えに来た明石入道の娘・明石の君と出会います。入道は、没落した家の名誉を回復すべく、住吉神に娘の事を祈り続けていました。明石の君の噂は、早く若紫巻で源氏の耳に届いており、入道が貴人に娶せようと大切に育てている娘であること、「......宿世違はば(思うような結婚ができなければ)、海に入りね」とまで言われていることが語られていて、このときは「海竜王の后になるべきいつきむすめななり」と都人に笑われています。
ところが先月見た歌舞伎では、この「海竜王」を光源氏役の海老蔵さんが演じており、なんともすごい迫力だったのですが、この二役の重ね合わせは、意味深長です。
結局、光源氏は明石の君と結婚し、姫君が生まれます。入道と光源氏の母・桐壺更衣はいとこ同士であり、帝の御子と受領階級の娘という身分違いの結婚とはいえ、家の因果もはたらいて、互いの不遇を打ち破る組み合わせとなりました。
と、物語のほうはさておき、わたしは物語とは逆で、先に明石に移動し、そのあと須磨を通過して新幹線に乗るため新神戸駅へ向かいました。その道中の写真はこちら。
CIMG0205
はい、この車窓の左側が山、右側が海になります。光源氏は、須磨の住まいを山側に構えていました。実際、「海づらはやや入りて、あはれにすごげなる山中なり。」(海辺からは少し奥にあって、しみじみとさみしい風情の山の中である)と語られています。
山陽電鉄では、いくつか「須磨」の名を冠した駅がありますが、下は須磨浦公園駅。光源氏の見舞われた暴風雨ではありませんが、急に雨が激しくなってきました。
sumaurakouen
そして、次が山側の写真。
suma(山)
海側はうまく撮れませんでしたが、海に山が迫っている感じはお伝えできたでしょうか?
明石の地が海も含めて晴れ晴れと明るいのに対し、確かに須磨はさみしい感じがしました。このあたりの話については、下記の論文に書いています。
湯淺幸代「『源氏物語』住吉の浜」(鈴木健一編『浜辺の文学史』三弥井書店、2017)
[画像:hamabenobungakusi]
よかったら、読んでみてください。また秋学期の授業では、源氏物語の若紫巻を講義しますので、明石の話もすると思います。お楽しみに!
akasi
(上の画は、歌舞伎で見た「海老蔵竜王」と物語の明石の君です)
「明石」といえば、『源氏物語』では須磨に流離した光源氏が住吉神の導きにより移動する土地。そこで、源氏は自分を迎えに来た明石入道の娘・明石の君と出会います。入道は、没落した家の名誉を回復すべく、住吉神に娘の事を祈り続けていました。明石の君の噂は、早く若紫巻で源氏の耳に届いており、入道が貴人に娶せようと大切に育てている娘であること、「......宿世違はば(思うような結婚ができなければ)、海に入りね」とまで言われていることが語られていて、このときは「海竜王の后になるべきいつきむすめななり」と都人に笑われています。
ところが先月見た歌舞伎では、この「海竜王」を光源氏役の海老蔵さんが演じており、なんともすごい迫力だったのですが、この二役の重ね合わせは、意味深長です。
結局、光源氏は明石の君と結婚し、姫君が生まれます。入道と光源氏の母・桐壺更衣はいとこ同士であり、帝の御子と受領階級の娘という身分違いの結婚とはいえ、家の因果もはたらいて、互いの不遇を打ち破る組み合わせとなりました。
と、物語のほうはさておき、わたしは物語とは逆で、先に明石に移動し、そのあと須磨を通過して新幹線に乗るため新神戸駅へ向かいました。その道中の写真はこちら。
CIMG0205
はい、この車窓の左側が山、右側が海になります。光源氏は、須磨の住まいを山側に構えていました。実際、「海づらはやや入りて、あはれにすごげなる山中なり。」(海辺からは少し奥にあって、しみじみとさみしい風情の山の中である)と語られています。
山陽電鉄では、いくつか「須磨」の名を冠した駅がありますが、下は須磨浦公園駅。光源氏の見舞われた暴風雨ではありませんが、急に雨が激しくなってきました。
sumaurakouen
そして、次が山側の写真。
suma(山)
海側はうまく撮れませんでしたが、海に山が迫っている感じはお伝えできたでしょうか?
明石の地が海も含めて晴れ晴れと明るいのに対し、確かに須磨はさみしい感じがしました。このあたりの話については、下記の論文に書いています。
湯淺幸代「『源氏物語』住吉の浜」(鈴木健一編『浜辺の文学史』三弥井書店、2017)
[画像:hamabenobungakusi]
よかったら、読んでみてください。また秋学期の授業では、源氏物語の若紫巻を講義しますので、明石の話もすると思います。お楽しみに!