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koudansyou-古典と現代

主に平安文学・文化についてのつれづれ書き(画き)

社会人向けのアカデミー講座、無事、終了しました。「先生のお話を次年度の講座でもうかがいたい」と話しかけてくださった受講者の方もいて、ありがたい限りです。
紫式部の「住」についての話は、昨年12月に訪れた盧山寺や福井県の紫式部公園の写真が大いに役立ちました。やはり、現地に足を運ぶ事は重要ですね。

さて、今月は、大学院に来ている中国からの交換留学生の指導教員の先生が、学生の様子と大学院の様子を見に来られるということで、ご案内しました。

大学院内の院生の共同研究室の案内は、現役院生にお願いし、懇談後は、昼食会場の紫紺館・椿山荘へグランドメニュー | 東京のホテルならホテル椿山荘東京。【公式サイト】。大学所有の建物内にあります。ちなみに、昨年の今頃は、こんな感じでした。

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大学のマスコット・めいじろうもサンタ姿に。
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およそランチは1300〜2000円で、食後にコーヒーか紅茶を選べます。

レストランも広くて、ゆっくり食事が楽しめます。明治大学(駿河台校舎)にお立ち寄りの際は、ぜひ立ち寄ってみてください。

最後は、明治大学の博物館と研究室をご案内。

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ちょうど、新収蔵・収蔵資料展をやっていました。

明治大学は、法学部と商学部が看板学部で、文学部の考古学専攻も有名です。ということで、展示内容は、商品部門、刑事部門、考古部門から成っています。個人的には、拷問器具(鉄の処女やギロチン)と、圧倒的な考古の貝塚の地層見本などがおすすめですが、各地の伝統工芸品を展示する、商品博物館の展示もほっこりしますよ展示紹介 | 明治大学
(こちらはオンラインミュージアム→。展示室をあるく|明治大学博物館 Mm ONLINE ミュージアム)

グッズも結構楽しいです。この時、私が買ったのはこちら。
スクリーンショット_24-11-2024_18952_www.instagram.com
この品切れ中だった方を11月に購入。ヘアゴムのインパクト大ですが、個人的にポストカードが
お気に入りです。他にもTシャツや、メモ帳、ペンなどの文具もあります。

研究室内は......雑然としていましたので、省略!(自主規制)。

最後に、最近話題になった山の上ホテルが明治大学の所有になったという話。本当にうれしかったです。川端康成や三島由紀夫など多くの著名な作家たちが愛したホテルとして有名で、「源氏研究」という雑誌の座談会の会場としても利用されていました。

本当に、大学の隣にあるホテルでしたので、喫茶やレストランをよく利用していました。休館すると聞いてからは、院生もケーキをテイクアウトし、皆で食べていたようです。

ちなみに一昨年、卒論ゼミの学生と、ホテルのいちごフェアの際、訪れた様子がこちらです。

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見ているだけでとろけそう。

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わたしが注文したクレープのアイス添えいちごづくし。

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このあと、大学院に進学した学生の注文したいちごパフェ。こんなスイーツがいつでもすぐ食べられるなら、もっと長くいたくなる(!?)というのは冗談ですが(笑)。

とはいえ、老朽化が進んでいたことも知っていますので、ぜひ我が勤務先には、素敵に改装して、この歴史あるホテルを上手に復活させてほしいと切に願っています。楽しみです。



来月、明治大学リバティアカデミー講座(一般向け講座)、「紫式部と清少納言の「衣」「食」「住」」の開講が決定しました。
詳細は以下の通りです。

期間2024年11月06日〜2024年11月20日
回数全3回
曜日水曜日
時間14:00〜15:30
定員30
一般料金9,900円
明治大学カード料金7,920円
明大生料金4,950円
教職員料金4,950円
法人料金7,920円
キャンパス駿河台キャンパス
レベル
(注記)料金は全て税込価格

講座趣旨
2024年の大河ドラマ「光る君へ」では、『源氏物語』の作者・紫式部の人生が多くの登場人物とともに描かれています。中でも清少納言は、ドラマでは親しくしている人物の一人ですが、実際の関係性はよくわかっていません。ただ、二人の著作(『枕草子』『紫式部日記』『源氏物語』)には、二人の性格や関係性もうかがえます。
本講座では、ドラマでも華やかに描かれる平安貴族の「衣・食・住」について、これらの著作を手掛かりに、紫式部と清少納言を生み出した当時の社会や文化を明らかにしつつ、二人の関係性について迫ります。講師は、文学と歴史の専門家で分担し、豊富な画像資料を駆使してお話しします。ぜひ、それぞれの視点をお楽しみください。


12024年11月06日(水)紫式部と清少納言の「食」
紫式部と清少納言の著作を元に、
平安貴族の食事について考えます。
(担当:湯淺)
22024年11月13日(水)紫式部と清少納言の「衣」
紫式部と清少納言の著作を元に、
平安貴族の装束について考えます。
(担当:中井)
32024年11月20日(水)紫式部と清少納言の「住」
紫式部と清少納言の著作を元に、
平安貴族の住居について考えます。
(担当:湯淺)

以上です。今回、2回目の「衣」の話をご担当いただく中井先生は、日本史がご専門です。いつもとは違った角度からのお話しも楽しんでいただけると幸いです。
申し込みは、11月5日までです。よろしくお願いします。

それでは、前回のつづき。歌舞伎座「源氏物語」後半です(以下、ネタバレを含みます)。
六条御息所と光源氏
(粗々ですが、歌舞伎座ポスターを元にした二人のイメージ画。御息所はちょっと意地悪そうな感じになってしまいました・汗)

光源氏は、御息所邸を出て、左大臣邸を訪れます。少し嫌味も言われますが、我が子を見せられ、「これが私の子」といかにも初めての子のように夕霧を見つめます。いやいや、あなた、藤壺との間に自分の子、もういるでしょ?、と突っ込みたくもなりますが、ぐっとおさえて、様子を見守ります。

そこに早速お祝いの来客があります。迎え出ようとする左大臣に対し、私が行くという源氏、結局、2人して行くことになりますが、そこに大宮も加わり、葵上は一人取り残されることに。

ちょっとありえない展開ですが(どうにかして葵上を一人にしたい?)、六条御息所の生霊に襲われるためには、一人にならなくてはなりません。

そして、御息所の登場。やや鬼のような化粧(眉毛のあたり)をしています。そして、幾度か、葵上を叩く素振りを見せます。これは、能「葵上」を思い起こさせます。能では、六条御息所が、葵上に見立てた着物を打ちます。

以前見た「狂言 源氏物語」(歌舞伎座、2018)の方では、葵上は、女方特有の海老ぞりの表現をしていましたが、今回はそれもなく自然に、赤子を守る葵上の姿が描かれていました。

そこに、光源氏が戻ってきて、葵上の肩を抱き、正面を二人で見据えて終幕。葵上は死なないラストでした。御息所も光源氏と入れ替わりで立ち去っており、物語には描かれる、葵上の姿を借りて、「祈祷をゆるめてほしい」と訴える姿などは、まったくありませんでした。

ただ、前半、光源氏が立ち去った後、御息所の声が男声に変わる場面があり、ここで「生霊」になるのだな、とわかります。

いかがでしょうか。歌舞伎版、六条御息所の巻。最後は、御息所にとり殺された葵上の遺骸を抱きながら、うなだれる源氏が見たかったと思うのは、私だけ?ここで、葵上が殺されるのは理不尽な気もしますが、御息所が最後まで報われない終わり方も、やや疑問が残ります。

ただ、染五郎版光源氏も、お父さんの幸四郎丈に負けず劣らず美しかったので、一見の価値ありです。

幕見席であれば、ネットから歌舞伎座 幕見席 オンラインチケット (e-tix.jp)
来月になればミレール配信で見られるかもしれません。
歌舞伎オンデマンド 作品一覧 | MIRAIL 公式動画配信サービス(ミレール)

どうぞ、ご覧ください。



今月、2回目の歌舞伎座は、新作歌舞伎、夜の部の「源氏物語・六条御息所の巻」を見てきました。人間国宝の玉三郎丈(72歳)の六条御息所、若手ホープ・染五郎丈(19歳)の光源氏という組み合わせで、話題になっています。なんと、夜の部はチケットが完売したとか。

そこで、前日正午から発売される幕見席(2000円)でこの舞台を見てきました。王朝物好き、玉三郎ファン、染五郎ファンは、かなり楽しめる内容のようですが、源氏物語に詳しい方からは、「ことごとく思っていたのと違う」という感想もあるようで。さあ、実際はどうなのか?

以下、ネタバレを含みますので、知りたくない、という方は、ここでストップ。
鑑賞後にお読みください。
源氏物語 六条御息所の巻
(美しく、絵になる二人ですね)

冒頭、左大臣家の邸。萬壽丈演じる大宮と、弥十郎丈演じる左大臣、二人の親が、娘である葵の上の出産を心配しています。セリフは、ほぼ現代語なので、大変わかりやすいです。私は、この二人が実体化していることに、少なからず心が躍りました。ほぼイメージ通り!特に、大宮と葵上(時蔵丈)の母子を、実の父子が演じているところに、ぐっときます。

葵上も、普段はあまり笑わないのに、出産後、夫である光源氏が訪れた時は、すこーし口角が上がっているのも、雰囲気が出ていてよかったです。細面の古風な顔立ちも、これまたイメージ通り。

と、以上、ほめてばかりいますが、気になる点もありました。

・大宮の立ち姿。
・夕顔の死の噂。
・御帳台がない。
・夕霧が跡取り。

大宮は、母として、心配しているのでしょうが、立ってうろうろするなら、左大臣の方が
ふさわしいかなと。また夕顔が生霊に憑りつかれて死んだことが噂になっていましたが、
夕顔自体は隠れ住んでいたはずなので、行方不明になっても噂にはならない気がします
(名前自体も隠していた)。また、葵上は褥一枚の上に赤子を抱いて座っていましたが、
自らずっと抱いているのも「?」でしたし(乳母が世話をするはず)、御帳台
(和風天蓋付きベット)の中におらず、外から丸見え状態なのも、演出上、仕方がないとは
いえ、気になりました。

極めつけは、左大臣が生まれた子を「跡継ぎ」「左大臣家も安泰」のように言っていたことです。
左大臣は、源家の跡継ぎが生まれた子を喜んだのか、左大臣家が安泰、というのは、葵の上が
光源氏の跡継ぎを生んだことにより、間接的に栄えることを言っているのか、
そうでないと、柏木(葵の上の兄である頭中将の子)こそ左大臣家の跡継ぎでは?と、疑問が
生じます。

次に場面変わって、六条御息所邸。女房達が、主人の着物を整えています。そこで、中将の君が、御息所の着物の「香」が変わっているのに気づき、「誰が変えたの?」と問いただします。しかし、それは御息所が生霊として抜け出した際、加持祈祷に遭って、染みついた芥子の香でした。物語では、御息所本人が気づく香ですが、歌舞伎では、女房が気づく体になっていました。

また奥からそそと現れる六条御息所が、まさに御息所そのもの。物憂げかつ儚げながらも、存在感たっぷり。玉三郎丈でなければ、出せない雰囲気でした。そこに光源氏が訪れ、ともに庭を眺め、番舞を舞って、その後、二人の行く末を悲観した御息所が光源氏をなじり始めます。「私はしょせん日陰の女」「あなたには妻がいらっしゃる」と。それに対し、源氏は「そんなことは初めからわかっていたではないか」「二度と来ない」と捨て台詞。立ち去られてしまいます。染五郎丈は、19歳で、等身大の源氏を演じられる年齢ですが、かなり落ち着いており、大人の印象でした。

年上の御息所相手に、強く出る姿勢が、ちょっと私の中の光源氏とは違うかな〜。

おそらく、物語の光源氏は、母性本能をくすぐる感じでのらりくらり。そんな源氏に、思いの丈を伝えられないからこそ、御息所の思いは深く沈んで生霊となるのではないでしょうか。

この辺り、解釈が大きく異なっていました。現代では、やはり強い気持ちを男性にぶつけても、それが受け止められないからこそ、相手の女性に向かってしまうという感じでしょうか。もちろん、鬚黒の北の方のように、夫の前で正気を失い、物を投げつける発散タイプもいましたが、元東宮妃の御息所にはなかなか難しかったかもしれません。そして、この場面で気になった点は、以下の通り。

・中将の君が年配ベテラン女房。
・姫君が元気。
・二人で庭に降りた後ベンチに座る。
・二人で舞う。
・口喧嘩する二人。


物語の中将の君は、御息所の代わりに光源氏を見送り、源氏にくどかれる若い女房ですが、ここでは一転、ベテラン女房になっています。これはこれで、その差異が面白かったです。
「姫君」というのは、御息所と死んだ東宮との間の子ですが、最初「若紫か?」と思うほど、元気が良かったです。大人になった斎宮女御の印象は、確かに年齢よりも、少女のようなかわいらしさがありますが、この元気な感じとは少し違うような気がしました。
また、二人で邸の風情ある庭を賞美するのは良いのですが、二人して庭に降りて、そのままベンチに座る、というのは、いかにも現代の恋人風でした。

その後の舞は、演者に寄せた演出ですね。御息所は、物語中、源氏に「書」をほめられているので、二人して書道する、途中から源氏だけが舞う、とかでもよかったかなと。
でも玉様の舞も、みなさん見たいですよね(笑)。

口喧嘩の違和感は、先ほど書いた通りです。さらに、先の葵祭の行列の際、御息所は、「(光源氏が)私に一瞥もくれなかった!」となじりますが、御息所の物見車は葵の上一行の車との場所争いで奥におしやられていたので、行列する源氏からは見ようがなかったはず。確かに、葵上一行の前では、それなりの態度をとって通り過ぎる源氏を見て、自分がまるでこの場にいない者のようであることを嘆く御息所ではありますが、この物言いにはちょっと無理があるように感じました。

以上、前半の感想です。後半に続きます。



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