記録的寒波が日本列島を襲って、一時はどうなるかと心配していたが、一転して好天になって、三日前には白山がくっきりと青空に映えていた。そして、気温も平年並みになった。むかしから大聖寺では、雪の寒さも「御願(ごんがん)まで」との言い伝えがある。毎年2月10日に行われる「菅生石部神社」の竹割りの奇祭「御願神事」のことである。
▼「ゴンガンまで」は、積雪の目安を指す言葉だから、暖かさは「春の彼岸」まで待つしかない。大聖寺に点在する神社仏閣寺には、江戸時代から季節の風物詩を表す伝統的な宗教儀式が今も行われている。菅原道真と大聖寺藩主を祀る「江沼神社」には、1月15日の「左儀長」から始まって、日蓮宗蓮光寺の「星まつり」での「水行」で水をかぶる行事。同じく「宗寿寺」でも2月11日には同様の「鬼子母神祭」での「水行」が行われる。
▼例年の4月15日から2日間は、「加賀神明宮」での「桜祭り」。古式装束を着けた大勢の祭礼委員が、神輿を引いて「水守神社」で一夜を明かし戻ってくる神事で、満開のさくら並木を往復する。春の行事を締めくくる伝統行事と言えば、「蓮如忌」である。浄土真宗の門徒が多い当地では、4月25日から5月2日までの間は、福井県境の「吉崎御坊」で蓮如上人の遺徳をしのぶ伝統行事。330年以上も続く一大法要会である。
▼今は、気象情報が茶の間に居ながら、身近になったが、完璧とは云えない。ましてや自然災害の予知はできていない。発生してからの予備的備えを意識するだけ。何も分からない大昔と変わらないのも事実である。
▼宗教行事には、寺院の創建由来に関わる神事儀式の他に、「長久国家安泰、五穀豊作、家内安全」を祈る。「こよみ」には、自然界の変わり目を記録して、苦しい寒さを「水行」という形を示し、耐え忍んで来た。そして、度重なる自然災害を乗り越えた。「春の風物詩」を通して、地方に伝わる宗教行事が、永久に続くことを願う。それに加えて、町民意識の継続も応援したい。
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