「またか!」と言い出したくなる事件が起きている。「人を殺してみたかった」という女学生の事件だ。戦中派の老人からすると、訳が分からない世の中になったものだと言いたい。確かに、戦後の食糧難から、「生めよ増やせよ、追いつけ」の掛け声で、高度成長期を導いた。そして、1968年には、国民総生産(GNP)が世界第2になった。47年前のことであった。
▼アメリカについで42年間も第2位を続けてきたが、2010年には第3位になった。そんなころから、これまで実例がなかったおかしな事件が続いている。精神鑑定を受けなければならない年少者の殺人事件が多発している。
▼「バーチャルの虚構世界」にはまった若年層が、現実世界で試みる殺人。これまでの殺人事件には、「利害からの恨み」が大半の動機だった。映画やテレビドラマの「推理小説」でも、犯人探しが、見る側の謎解きも楽しみだった。
▼「シャーロック・ホームズシリーズ」の『ワトソン君』。横溝正史の「金田一耕助」などで育った世代からすると、名探偵でも最近の殺人犯に到達できないストーリーだ。逆に、犯人像になかなか近づけなかった警察側すれば、犯人側からネットで予告があり、「やった」という、告白する言葉が入手できる。これまでのような地道な捜索が不要になった。
▼一番困った世になった。天使のような顔をした少女が、善意で知り合った人の隙を狙って凶器で殺す。誰でもいい、通行人を襲う少年。ネットで知り合った利害のない人も殺される。それも凶器を準備していたという。
▼便利な世の中には、これまでなかった不便も出てくるという。しかし、「不便」のなかに殺されるという言葉はなかったはずだが、これを「恐怖」という言葉に置き換える時代になったのか。
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