1.5°Cロードマップとは

1.5°C Roadmap 5つの変化と20の好機

私たちは常に大きな課題と向き合いながら、変化し続ける世界を生きています。
その中で、企業は人々のニーズにこたえ、新たな価値を創造し、
課題を克服することで、社会を前進させる原動力となってきました。

産業革命前と比較し地球の気温上昇を1.5°Cに抑えるという、
世界が合意した目標に向けて、
社会経済のあらゆる領域で様々な変化が起きています。
その変化を、より豊かで持続的な社会へとつなげることもできるのではないでしょうか。

1.5°C目標の達成と持続可能で豊かな社会の実現に向け、
これから起こるであろう社会の変化と、求められるアクションを
この「1.5°Cロードマップ」にまとめました。

企業が変化を捉え、適切に意思決定をするためには
変化がどのようなタイムラインで進んでいくのか、
その見通しを持つことが欠かせません。
1.5°Cロードマップが、変化に伴う事業機会を先んじて見つけるための道標として、
目指したい未来への案内役として、多くの方に活用されることを願っています。

5つの変化

生産性が変わる
生産性が変わる
電化・省エネ、デジタル化による効率化が相乗効果を発揮して、生産性を飛躍的に向上させます。
自動運転やフィジカルインターネットを活用して移動や物流も効率と自由度が高まります。
エネルギーの作り方が変わる
エネルギーの作り方が変わる
再生可能エネルギー(再エネ)主体のシステムへの速やかな転換は、幅広い社会活動の脱炭素化の要。
エネルギーの国内自給率を高め、安価で安定した電力や水素を利用できるようにします。
素材利用が変わる
素材利用が変わる
脱炭素/持続可能な素材が拡充するとともに、あらゆる資源が循環型の利用方法へとシフトします。
製品のデザインやビジネスモデル、消費者の選択も循環型の資源利用を前提としたものへと変化します。
ルール・インフラが変わる
ルール・インフラが変わる
炭素排出を減らすことにインセンティブを与えるカーボンプライシングに加え、送電線の利用や土地・建物・港湾・海域利用などのルールやインフラが脱炭素社会に合わせて刷新。
求められるスキルや雇用も変化します。
マーケット・マインドが変わる
マーケット・マインドが変わる
モノの所有よりも機能やサービスの価値が重視され、知財・人材など無形資産が企業競争力を左右するように。
デジタル化で働き方・くらし方が変わり、大都市一極集中から分散型都市への変化も加速します。

1.5°C
ロードマップが示す
「変化」と「好機」
1.5°C目標に向けた「変化」の中には、企業・人々にとっての様々な「好機」が含まれています。

20の「好機」をクリックするとそれぞれの詳細をご覧いただけます。
先進的に取り狙んでいる企業の事例は「企業事例一覧」で紹介しています。

生産性が変わる エネルギーの作り方が変わる 素材利用が変わる ルール・インフラが変わる マーケット・マインドが変わる
5つの変化 生産性が変わる エネルギーの作り方が変わる 素材利用が変わる ルール・インフラが変わる マーケット・マインドが変わる
20の好機
高付加価値サービスへ転換する
あらゆるデータを駆使し多様なニーズを捉えることで、付加価値を高めつつ脱炭素を両立するビジネスモデルが実現。デジタル化・組織改革に伴う短期的コスト以上の、長期的なメリットが期待されます。
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エネルギーもデジタルでつながる
デジタル技術により再エネの出力・需要予測が高度化。さらにリアルタイムの電力潮流管理や、デマンドレスポンスによる需給調整で再エネ利用が高効率になり、社会全体で安定的なエネルギー消費が実現します。
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ロスなく高付加価値な生産へ
高度な予測技術・生産ロボットなどのデジタル技術は、多様化する顧客ニーズに対応した少量多品種の生産を可能にし、高付加価値化。合理化やオンラインサービスの普及はペーパーレス化を進め、ムダのない素材利用を達成します。
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脱炭素の取り組みがおトクになる
本格的なカーボンプライシング(CP)を段階的に導入し、「GHG排出を減らすほうがトクになる」が当たり前に。政府収益は脱炭素投資やジョブチェンジ支援などに活用されます。
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人・情報・共創が価値の源泉に
人材育成や組織づくり、ブランド、知財など、形のないものこそが競争力を左右する要素に。経営においては無形資産への投資をいかに戦略的に行うかがポイントとなり、オープンイノベーションの要請が高まります。
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電化が品質・効率を向上させる
電化は中長期的なエネルギーコスト削減はもちろん、デマンドレスポンスなどと組み合わせることで、再エネの自家消費・電力余剰時間帯の稼働によるコスト削減を実現し、生産性を飛躍的に高めます。
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太陽光発電が一気に身近になる
屋根置きや営農型の太陽光発電は、自然環境への負荷が少なくコスト競争力が高い発電システム。住宅や個人事業など、投資回収が相対的に難しい小規模案件への導入を促進することで、利活用が加速します。
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再エネ・水素で素材をつくる
素材産業の製造プロセスでも水素還元製鉄法やFT合成などの技術開発が進み、将来的には化石燃料が使われなくなります。製造時のエネルギーも再エネとグリーン水素が利用されることから、多くの製品は再エネ・水素を用いた素材となります。
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快適な持続的建物が標準化
今後建てられる建物は、多くが2050年まで残ります。新築や大規模改修では高水準な断熱性能や太陽光発電(PV)設備の設置、電化設計にするといったルールの原則化が望まれます。
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デジタルで移動・行動がより自由に
テレプレゼンスが普及したことで物理的移動や直接対面する必要性が低くなり、「より高い付加価値を生み出せる行動」の選択肢が広がっています。選択肢は医療・教育・居住地・勤務地などにも及びます。
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移動・輸送が創造的時間を生む
自動運転や歩きやすいまちづくりの実現は、移動時間を創造的な時間へと変えます。また、輸送インフラと運用システムの統合・最適化により、輸送効率が高まり、人材不足をはじめとする物流課題の解決につながります。
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みんなの海でエネルギーをつくる
洋上風力発電は国内産業を育み、雇用創出で地方を豊かにします。日本は立地上、洋上風力発電の大きな可能性を秘めた国。導入目標の設定・案件規模の拡大など市場予見性を確保することで、国際的競争力が高まります。
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強くて軽い素材がメインに
軽量で強固な素材であるCLT木材(直交集成板)や炭素繊維、セルロースナノファイバー採用の強化プラスチックなどが、くらしの様々なシーンに普及することで、素材性能だけでなく安全性・生産性向上も進みます。
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デジタルインフラがさらに整う
社会経済のDXはガマンする省エネではなく、便利で効率的な低エネルギー消費につながります。そのためには人材育成やデジタルインフラ、ルールの整備が欠かせません。
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長く使われるモノが価値を生む
データの力と連動し、モノを長期間使えることが信頼性の証に。EVに搭載された蓄電池の使用履歴記録で安全性が確認できるなど、メンテナンスのしやすさや、使用履歴や材料の透明性に価値が置かれるようになります。
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シェア・リユースの活用が広がる
トラッキングをはじめ高度なデジタル技術の活用を推進することで、製品や機械のシェアリング・リユースが、より便利かつ正確にできるように。社会全体での利用が一般化し、省資源・稼働率向上が図れます。
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水素で再エネがより便利に
石炭火力発電は2035年までにフェーズアウト。ガス火力発電は水素火力へと転換し、バックアップ電源として再エネ出力の季節変動に対応します。また、製造時間帯が柔軟な水素の国内製造は電力需給バランスを安定化させます。
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都市が資材の保管庫になる
リユース・シェアリング、あらゆる素材のリサイクルがビジネスに組み込まれ、循環経済が発展します。都市は消費するだけの場所ではなく、資材の一時的な「保管庫」として機能するようになります。
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みんなが再挑戦できる社会に
社会の変化に伴い、必要とされるスキルも変わるため、リスキリングが不可欠。官民連携による学習機会の提供や、生産性の高い分野の仕事に挑戦したくなる支援などの整備が急がれます。
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日本中のまちがずっと豊かに
地域共生や自然資本との交流が見直されるとともに、新たなモビリティ・デジタルの導入や再エネ開発が、地域メリット重視で行われるように。雇用が生まれることで、大都市一極集中から分散型への変化を後押しします。
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豊かで持続可能な社会
新しい社会に適応した、持続的な経済成長
分散型社会・地域の繁栄
自然との共生
気候リスクの少ない社会
気候変動の影響を、適応可能な範囲にとどめる(気温上昇が大きいほど不可逆的な変化が連鎖的に起こりやすくなり、社会経済の適応が困難に)
便利・安全・安心なくらし
デジタルを起点にした変化が、より便利で安全・安心なくらしへと導く
エネルギー自給による発展
再エネの普及拡大により、化石燃料を輸入するために国外流出していた資本が国内で循環するように

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1.5°Cロードマップへの期待

1.5°Cロードマップは供給側だけでなく、需要側の行動変容の重要性を示している。1.5°Cロードマップはエネルギーの自給率、エネルギーの安全保障問題等、日本が抱える社会課題を解決する一助となる。
株式会社リコー 代表取締役会長
山下良則氏
コストは誰かの売上、すなわち誰かの成長戦略につながっているはず。それを鮮明に表現したのが1.5°Cロードマップ。さらには、企業価値のほとんどを占める非財務的な"見えない価値"の可視化を適えている。
シブサワ・アンド・カンパニー
渋澤健氏
いま社会に残されている大きな問題が脱炭素をはじめとするサステナビリティであることは間違いない。こうした問題をビジネスとして解決すれば対価が得られる。道徳的な商売が最も長期的にしっかり儲かる、と唱える"論語と算盤"の考え方にいま立ち戻るべき。
一橋ビジネススクール特任教授
楠木建氏
世界が気候変動の最悪の影響を避けるためには、社会のあらゆる部分がそれぞれ役割を果たさなければならない。SBTiは、IGESによる日本のネットゼロ移行を加速する取り組みを歓迎し、すべての企業、金融機関が速やかかつ大幅に排出削減を実行するとともに、サプライチェーンにもそのように勧めることを求める。
Head of Outreach and Engagement,
Science Based Targets Initiative(SBTi)
Tracy Wyman氏
この新たなレポートは、日本が1.5°Cの公約を達成し、再エネへの投資を求める多くの企業がいかに投資ポテンシャルを引き出せばよいのか、取るべきステップを明示している。再エネへの移行がもたらす機会は膨大であり、日本企業や社会は脱炭素化に向けたより大胆な戦略から多くの利益を得ることができる。
Head of RE100, Climate Group
Ollie Wilson氏
IEAの2050年ネットゼロシナリオに整合するためには、先進国全体として、2045年までにはネットゼロを目指す必要がある。このロードマップは、日本でより早期にネットゼロを目指す幅広い議論の旗印になるものとして称賛する。
Head of Tracking Sustainable
Transitions Unit,
International Energy Agency(IEA)
Daniel Wetzel氏