高齢者福祉施設等における
救急ガイドブック
伊予消防等事務組合消防本部
令和4年8月1はじめに
近年の高齢化の進展を背景に、当組合管内(伊予市・松前町・砥部町)では、
65歳以上の高齢者の方の救急搬送件数が年々増加しており、令和3年中は救
急搬送人員の68.2%を占めています。
また、高齢者福祉施設等(以下「施設」という。
)からの救急要請も増加して
おり、
急病や転倒、
誤飲などの不慮の事故に起因した救急事案が多く発生してい
ます。しかしながら、施設利用者の生命に危険が迫っているにも関わらず、応急
手当が行われていないケースが散見されます。
このことから、
当組合では迅速に
救急車を出動させる体制の確保や、救急事故を未然に防ぐ予防救急の啓発など、
増加する救急需要に対する総合的な救急需要対策を推進しているところです。
このガイドブックは、
施設の職員の方々へ、
施設内でできる病気や怪我の予防
方法の紹介や、緊急時の救急対応を円滑に行えるよう作成したものです。
いざというときの対応を確認し、
施設の皆さまと救急隊が理解を深め、
より円
滑な救急対応が行えるよう、このガイドブックをご活用いただければと思いま
す。
目 次
1 施設内での予防救急・・・・・・・・・・ P 2
2 救急要請時対応ガイド・・・・・・・・・ P 4
3 119番通報とDNAR・・・・・・・・ P 5
4 救急車を呼ぶ前に・・・・・・・・・・・ P 6
5 救急情報提供シート・・・・・・・・・・ P 721 施設内での「予防救急」
救急搬送事例からみえてきた、施設内でできる「予防救急」のポイントをご
紹介します。皆さまの施設での状況をチェックしてみましょう!
□しろいしかく 手洗い・うがいの励行
インフルエンザや新型コロナウイルス、ノロウイルスなどの感染症が発生
し拡大しないように、職員の皆さまだけでなく、入所者全員の手洗い・うがい
を徹底してください。
また、感染経路(接触・飛沫・空気など)や、嘔吐物などの正しい処理の方
法など、感染予防対策を知ることで、施設内の二次感染を防げますので、感染
症に対する正しい知識を身につけてください。
□しろいしかく 転倒・転落防止
高齢者の方は、
普段生活していて慣れている場所でも、
小さな段差でつまず
いてしまい、骨折を伴う重症なケースとなってしまうことがあります。
対策として、
手すりを設置する、
可能な限り段差をなくす
(敷物を敷かない)
とともに、普段から整理、整頓を心掛け、廊下や部屋の明るさにも注意してく
ださい。
また、階段、廊下、玄関、浴室などには滑り止め対策をしておきましょう。
□しろいしかく 誤嚥・窒息の予防
窒息事故は、餅、ご飯、パン、お肉などで多く発生しています。特に高齢者
は、咀しゃく力や嚥下反射の低下により窒息を引き起こすリスクが高くなっ
ています。施設利用者が食事をする際には、誰かがそばに付き添って、窒息事
故の防止に努めてください。
・食物を小さく切るなどして、食べやすい大きさにする
・少量ずつ、ゆっくり食べる
・食べているときに話しかけない
・食事の際は、お茶などを飲んで、のどを湿らせる
□しろいしかく 浴室の事故
浴室事故は、
居室を除いた住宅、
施設空間の中で最も死亡率が高い場所とな
っています。特に冬季は「ヒートショック」に十分注意が必要です。
対策として、
急激な温度変化を避けるため、
入浴前に脱衣室や浴室内を温め
ておき、半身浴を心がけ、お湯の高さを心臓より下にするなどし、急激な血圧3の変動を防ぎましょう。
□しろいしかく 生活状況等の情報提供と記録
入居者の方々の毎日の状況について記録し、
いざという時のために、
職員の
皆さまが、入所者の状況を把握できるような記録を作成しておきましょう。
また、別添「救急情報連絡シート」を事前に作成しておいていただき、緊急
事態発生の場合は、到着した救急隊へ渡してください。
□しろいしかく 事故発生時の対応
施設内で事故防止に努めていても、いつ緊急事態が起こるか分かりません。
いざというときに慌てないために、施設内で各職員がどのように行動した
らよいのか、事前に検討してください。
休日や夜間など、
特に少ない人数で対応しなければならないときに、
どのよ
うに行動したらよいのか、緊急時に対応する資器材(AED、救急バッグ等)の
設置状況についても事前に確認しておきましょう。
□しろいしかく 応急手当の習得と実施
入居者が生命の危険に陥っているとき、最初に気付くのは施設職員の皆さ
まです。消防署では、いざというときのための応急手当を学ぶ「救命講習会」
を開催していますので、応急手当を身につけましょう。
応急手当の講習に関するお問い合わせ、お申し込みは、お近くの
消防署までご連絡ください。
伊予消防署 089-982-0119 中山出張所 089-967-1171
松前消防署 089-984-3404 双海出張所 089-986-0074
砥部消防署 089-962-2119 広田出張所 089-969-21214救急要請時対応ガイド
緊急事態発生!!
□しろいしかく 施設内に知らせ、職員を集める
□しろいしかく 集まった職員に情報を伝える、指示を出す
□しろいしかく 必要な応急手当を実施する
119番通報!!
□しろいしかく 施設住所・施設名
□しろいしかく 年齢・性別
□しろいしかく 傷病者の状態(意識・呼吸の有無・症状など)
救急車到着!! 救急隊の誘導をお願いします!!
□しろいしかく 玄関等のカギを開けてください
□しろいしかく 傷病者の今の状況を伝えてください
□しろいしかく 傷病者の居る場所まで誘導してください
※(注記)伊予消防では、心肺停止に陥った傷病者が発生したときに、救急隊のほか
消防隊を出動させることがあります。
救急車への同乗をお願いします!!
□しろいしかく 搬送先医療機関への申し送りが必要です
□しろいしかく 傷病者の状況が分かる方が救急車に同乗してください
□しろいしかく カルテ等の申し送りに必要なものを持参してください52 119番通報にあたって
心停止や窒息などの生命の危機的状況に陥った傷病者や、これらが切迫し
ている傷病者を救命し、社会復帰に導くためには、
「救命の連鎖」が不可欠と
なります。
いざというときに慌てないためにも、
事前に対応マニュアルを作成して備え
ておくことが望ましいと考えられます。
特に、
利用者の方の心肺蘇生を望まな
い意思がある場合には、
あらかじめ担当医師と協議して事前に対応について取
り決めを行っていただくようお願いします。
(1) 119番通報時のお願い
119番通報時には、次のことに留意してください。
☞ 応急手当(心肺蘇生)の実施
意識が無く正常な呼吸をしていない場合は、
すみやかに一次救命処置(胸骨圧迫)を実施してください。心肺蘇生は、救急隊(消防隊)が到着し、交
代するまで継続してください。
☞ 誘導と開錠
特に夜間などは、
玄関など入口を開錠し、
救急隊
(消防隊)
が到着したら、
傷病者の居る場所まで誘導してください。
☞ 情報提供
別添
「救急情報連絡シート」を事前に作成いただき、
緊急事態発生の場合
は、到着した救急隊(消防隊)に渡してください。
(2) DNAR(蘇生処置をしないで)の意思表示
傷病者や家族から DNAR
(蘇生処置をしないで)
の意思表示がある場合は、
あらかじめ連携病院やかかりつけ医師に相談しておいてください。
救急隊は救急要請があった場合、
応急処置を何もしないで、
医療機関へ搬
送することはできません。
心肺蘇生法などの救命処置を実施することが、救急隊の義務とされていますので、ご理解とご協力をお願いします。63 受診が必要かどうか判断に迷ったら
「全国版救急受診アプリQ助(キュースケ)
」は、急な病気やけがをして
「医療機関を受診した方がいいか?」、「救急車を呼んだ方がいいか?」
と困
ったときに、
ご自身の判断の一助になることを目的に、
総務省消防庁が作成
しているアプリです。
医療機関を受診した方がいいのかどうか?救急車を呼んだ方がいいの
か?など、判断に迷ったときにはご利用ください。
※(注記)アプリのダウンロード及び詳細は、
総務省消防庁ホームページを参照し
てください。
「Q助」QRコード7救急情報連絡シート
【伊予消防等事務組合消防本部】
施設名 伊予老健施設 記載日 令和 4年 1月 1日
T E L 0120-123-4567 作成者 本人・家族・施設(伊予一郎)
【事前に記載いただく事項】
氏名
フ リ カ ゙ ナ しょうぼう たろう
消防 太郎男女
生年月日
M・T・S・H
1年 1月 1日(80 歳)
住所 伊予市下吾川 950-3 TEL 089- 111-2222
現病歴
高血圧、糖尿病
既往歴
狭心症
服用薬
降圧薬、インスリン
アレルギー
なし
かかりつ
け病院名
伊予クリニックADL要介護2
DNAR(蘇生処置を望まない)の意思 有(本人・家族・かかりつけ医師)
・無
連絡先
(家族等)
氏名 消防 花子(続柄:娘、長女 )
住所 伊予市下吾川 111-222
TEL 089-222-3333
【119番通報時の記載事項】
いつ、どこで・・・
本日の17時頃、施設内の風呂場
何をしていて、どうなった・・・
体を洗っていたら、突然意識消失(約 2〜3 分間)
、嘔吐有り
意 識 □しろいしかく 清明 声掛けに反応 : ☑有 ・ □しろいしかく無
呼吸数 12回/分 脈拍数 80回/分
血 圧 180/95mmHg 体 温 37.1°C
SpO2 96% 吐気・嘔吐 ☑ 有 ・ □しろいしかく 無
行った処置等
嘔吐処理、酸素投与(3L)
【お願い事項】
※(注記)呼吸がない場合は、
救急隊到着まで心肺蘇生
(胸骨圧迫)
を行ってください。
★この救急情報連絡シートは、救急業務以外に使用いたしません。